加速

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ーーー 一悶着はあったけど無事に開発展も終わり、私と月島さんは二人で行きつけの居酒屋へとやってきた 「途中ちょいひやっとしたけど無事に終わってよかったな」 自分のジョッキを私のグラスに当てながら、月島さんが言った 「ご迷惑おかけしました…」 「いや、良くやってくれてたぜ花井は」 「ありがとうございます…」 「……んで、翔介とはどうなんだ?」 急に話題の舵を強引に切ってくる月島さんに、私は突っぱねるように返す 「…え?どうって、普通ですよ…」 「最近会ってんのか?」 「…いえ…会ってないです」 「…多分だが、こないだの病院からなんかこじらせてるっぽいな」 超図星だった 鋭いな…本当に 「その顔は当たってるって顔だな。開発展も終わった事だしそろそろそっちの問題解決も力入れたらどうだ?」 …まあ開発展は別に関係ないけど 確かに… このままだと私の精神がもたない 今でもーー今すぐ会いたくて身が引き裂かれそうな想いなんだから… 「ていうかそもそも普通彼女のツレの見舞いに一人で行くか?あいつもちょっとおかしいだろ」 おかしいのは分かってる 世間の常識からはズレまくってる だけどそれは、月島さんが知らないからだ 彼の心の根底にあるものが何なのか…そしてその深さを 月島さんと飲みながら、私は考えていた 現状を打破するにはどう動けば最善なのかを ーーー 「ご馳走様です。今日は色々すみませんでした」 店の前で、私は月島さんに深々と頭を下げた 「おう。今日はお疲れさん」 「じゃ、失礼します。また月曜日からよろしくお願いします」 「……花井!」 立ち去ろうとしたとき、月島さんに呼び止められた 「…絶対に一人で苦しむなよ。なんかあったら連絡してこい」 「…ありがとうございます」 もし月島さんに、翔介さんの闇を話したら…どう思うだろうか 友達が後輩のストーカーだったなんて知ったら…月島さんならどういう行動をとるんだろうか きっと胸ぐらを掴んで殴り倒すんだろうな でも…それは私が望んでいる事じゃない そんなことをしても彼の心は手に入らないから 彼の心から…ただ菜穂を消し去りたいーー ただそれだけで、私は満足なんだよ…
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