加速

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…今 なんて言ったの… 必死に脳内で咀嚼するけど 頭が真っ白で何も考えられない… 「わ…… 別れない…から…」 それだけが辛うじて捻り出せた言葉だった 「佳純が許せないものは、僕の全てだ。それと同じ意味だ…だからもう別れるしかないんだよ」 吐き捨てるように、冷たく、翔介さんはそう告げた 「違う!翔介さんの全てなんて、なんでそんな事言うの!!?じゃあ私と過ごした日々は何だったの!全部翔介さんにとっては何でもない日々だったって言うの!?」 「…大事だったよ。だけどその日々にも、彼女の存在はついてまわった筈だよ」 否定出来ない… 悔しくて涙が止まらない 私は何でこの人が好きなんだろう… こんな私以外を強く想う人を… だけど 離れたくないんだ… 翔介さんがいない人生なんてもう考えられない 「私はいつになれば貴方の一番になれるの…どうすれば菜穂を忘れてくれるの…?教えて…教えてよ翔介さん!!」 「佳純の感じる一番というものと、僕が抱く一番という感情は…多分交わらないよ。恋や愛じゃないんだ」 「意味がわからない!わかるように言ってよ!!」 「ここ数日、風見と一緒にいて…それを改めて強く感じてしまった だから今の僕は…佳純のそばにいる資格さえないんだ」 「じゃあ…もう言わないから…っ。菜穂の事で口出ししたりしないから…お願いだから別れるなんて言わないで…私から離れないでよ…お願いします…」 「これ以上佳純を苦しめたくないんだ! 僕の事は忘れて…新しい恋をしてくれーーー」 「嫌!無理に決まってるでしょ!!」 病院の前で、私はみっともなく騒ぎ立て翔介さんの腕にしがみつく 周りにいる人達は何事かと皆見ている そんな事も気にならないくらい 私はひたすら翔介さんに縋った 「お願いだからそばにいてよお…翔介さん…」 それを冷たく斬り捨てるように 翔介さんの口から出た言葉 「……さよなら」 私の腕を振り払い 翔介さんは去ってゆく 嘘だ…嘘だーー これは…夢だ こんな現実あるはずがない だってこの間まで…私達はラブラブだったじゃない… あの甘い日々は…虚構だったの…… 私はどうすれば…いいの…
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