排除

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  ーーー 「先月からずっと休んでるらしいな。風見は」 「そうみたいっすねえ…なんか事故に遭ったって聞きましたけど…」 「車に轢かれたみたいだぞ。命に別状はないらしいが」 「マジですか!?だ、大丈夫なんですか??」 「お前は心配でしょうがないんじゃねえか?なんせ風見の事大好きだもんな」 「それは今関係ないですよ!普通に同僚として心配なだけです!」 「ハハ、冗談だよ。まあ大丈夫かどうかを教えてやりたいのはやまやまなんだが…俺もそこまでしか知らないんだよ」 社員食堂で先輩の小鳥遊さんと同期の古場が俺の隣でそんな話をしている 余計なお節介かもしれないと思ったが、俺は二人の話に横槍を入れた 「……企画部の人に訊いたらもう殆ど完治してるらしいぞ。そろそろ出社するんじゃないか?」 「そうなの!?てか乃木下…お前どっからそんな情報入手してくんだよ!」 「乃木下はお前と違って友達が多いんだよ!な?」 「いやそれ普通にパワハラですからね小鳥遊さん!」 「ハハ…ハ…」 二人のそんな話題を尻目に フワリと音も無く、俺の斜向かいに一人の女性が座った ーー確か彼女は… 「古場…あの子企画部の子だぜ。しかも多分風見と同期だった筈」 小鳥遊さんは古場に小さく耳打ちした 「知ってますよ!名前…何だったかなあの子…平井だったっけ?あ、そうそう!平井だ!」 「……花井だよ」 「そうだ!花井だ!思い出した!」 「お前声でけえよ。聞こえてるぞ」 本当にな…失礼な奴だ… 古場の声に彼女はこちらをチラリと一瞥し、食事に戻る その瞳を見て、俺の中に違和感が迸った あれ…花井ってこんな子だったかなーー いつも風見の近くで静かに笑ってて それに…もっと穏やかな雰囲気を放っていた気がする なのに 今向かいで食事をしている彼女は 空気を張り詰めさせるほどに冷徹なイメージだ
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