215人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねえ、花井さん!ちょっと訊きたいんだけどさ!風見の容態は大丈夫なのかな?」
臆面もなく古場は彼女にそう尋ねた
だけど彼女は聞こえていないのか、無視して食事を続けている
「花井さん!聞こえてる!?」
変わらず食事を続ける彼女はやはり意図的に無視しているようだった
「え…まさかの無視?傷つくわそれ。なんか言ってくれよ!なぁ!」
腹が立ったのか古場は彼女に食ってかかった
「やめとけ古場。食事中だぞ」
「いやだって風見の友達なんだから事情知ってんでしょ!?心配してる奴に教えるくらい普通の事じゃねえか!それを無視って…おかしいだろ!」
「…いやまあそうだけど…今は都合が悪いかもしれないだろ」
すぐに熱くなるのが古場の悪い癖だ
まあそれくらい風見を本気で心配しているのもあるだろうけど
にしても花井も…どうして無視するんだ?
まさか風見と喧嘩してるとかかな…
「あのさ花井さん!他部署の奴にこんな事言われたくないだろうけどさ…一応同じ会社なんだからちょっとは愛想良くするべきじゃねえ?機嫌悪いのか知らねーけど会社でそういうのあんまり表に出さないほうがいいよ?」
トゲのある言い回しでわざと喧嘩を売るように古場が言う
機嫌が悪い時が丸わかりな古場がよくそんなことを言えたものだとも思うが…
「まあまあ古場、もうやめとけよ。早く食え」
小鳥遊さんも不穏な気配を察知したのか、古場の気を逸らそうとしている
「でも…っ!」
「女には色々あんだよ」
「そんなもんなんすか」
その間も花井は黙々と箸を動かし続け、茶碗と皿の上の物が綺麗に平らげられていく
そして食器を重ねて持ち、その場を去ろうとした
「チッ、可愛くねえ女」
一矢報いようとしたのか、最後に古場がそう吐き捨てた
すると今まで沈黙を守っていた彼女はこちらを振り向き口を開いた
「…可愛くなきゃ生きてちゃ駄目ですか?」
「え?」
その質問に古場は固まる
同時に俺も…彼女の中に見てはいけない何かを見てしまった気がして、一声も発することが出来なかった
最初のコメントを投稿しよう!