排除

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とは、言ったもののーー 「花井さん、このお酒なんてどうでしょう? 仄かな甘さのお酒なんだけどこれなら香りとしては十分じゃないかしら? それにアミノ酸含有量も豊富なので保湿にも適していると思います」 「…本当ですね。この香りとてもいいと思います」 「分かりました。では化粧水に合わせるお酒の銘柄はこちらにしますね」 「…はい」 かれこれもう三日が経過しているのだけれど… …この女、驚く程まともに仕事をしている しかもーーーお嬢様だから何も知らないのかと思いきや、お酒や化粧品に対する知識もしっかり備えている お嬢様はお嬢様でも流石は一流企業のお嬢様だ 幼少からの英才教育ってやつなのかな 世界の不平等さに益々腹が立ってくる ーーーしかし、ここまで動きを見せてこないと私も真面目に仕事をするしかなくなるな 今何を考えているのか…全く読めない 「名前の方はどうしますか?」 「え?あ、名前ですね。淡雪とかどうです?」 「んー、雪ですか…私的にはこの香りは春をイメージされると思うのですが…では間をとりまして白桜とかどうでしょうか?」 「いいですね。それで行きましょう」 「ではとりあえずはその案で進めますね」 名前なんか何でもいいんだけどね正直…それよりこっちはあんたの動向が気になって仕事どころじゃない 私の懸念を他所に、ひょっとしたら本気で仕事に取り組む目的だけでここに来たんじゃと思うくらい真剣な眼差しで春宮さんは私に次から次へと質問してくる 「あ、そろそろお昼ですね。花井さんよろしければ一緒に外に食べに行きませんか?」 ご飯が不味くなっちゃいそうなんだけど… でも オフィスにいる他の人達が見てる手前、無碍に断ることは出来ない 「いいですよ」 「まあ、嬉しい!」 思ってもないくせに。そういうのほんとにいいから 「春宮さん。良ければ俺も一緒していいですか?」 え? 気がつけば隣に立っていた月島さんがそう言った 「大丈夫ですよ。えっと…月島さんですよね?」 「あれ、名前言いましたっけ?」 「他の方が呼ばれていたのを盗み聞きしてしまいました。すみません」 「いや、凄いですね…」 悔しいけどその耳聡さは称賛に値するな もしかしたらこの女は私より数倍は上手かもしれない… 気を引き締めないとーー
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