スト彼

排除

「あの…ご存知なんすよね？花井が翔介と…付き合ってることは」

ーーーもう付き合ってないけどね

「そのようですね」
「…言いたい事分かりますか？」
「ではお尋ねしますが、月島さん」

「…はい」

「人を好きになる事は悪い事なのでしょうか？」

「悪い事じゃないっすよ。でも貴方は花井とも面識があって花井と翔介の関係を知ってるんですよ？そこに対して何も感じないのかって話ですよ」

「感じません。何故なら今申し上げた通り、人を好きになる事そのものに罪はないからです。私はたまたま花井さんと同じ方を好きになり、その方に振り向いてもらうために努力する。ごく普通の事ではないでしょうか？

それを辞めろと咎めるということは、要はご自分に自信がないと仰ってるようなもの。本当に想いあってるならばどんな横恋慕があろうと意に介さないと思います。

本当に鳥谷さんの事を愛しているのならば花井さんがすべきは、私に釘を刺す事ではなくより愛される努力をする事じゃないでしょうか？

つまり、なんの努力もせず外から来る者を弾くという行為は…私からすればただの怠慢にしか思えません

花井さん、よく覚えておいてください

私は貴方から鳥谷さんを奪おうという考えは持ってないのです

ただ貴方より鳥谷さんに好かれる努力をします

その結果は、鳥谷さんが決める事

私達の諍いなどでは何も解決しないのですよ？」

は？？？

ーーー怠慢…？

こいつ何言ってるの？

努力って何よ

どんな努力をすれば翔介さんに好かれるの？

教えてよ

どうすれば菜穂に勝てるのよ…

そんな答えがあるなら教えてよ！！

何も知らない癖に…

彼の執着心の強さを…想いの歳月を…

あんたなんかにわかるわけない

努力なんて翔介さんの前では何の意味もないって

好かれる努力なんてしても無駄なんだって

だけど私は何一つ言い返せない

こいつの…この殺してやりたいくらいムカつく女の言うことに…反論出来る立場にいないから

その資格がないからーー

「春宮さんの言いたい事はわかった」

怒りに震えるしか出来ない私を尻目に、月島さんが口を開く

「私は間違っていますか？」

「…いや、正論ですね」

「…理解を得られて光栄ですーー」
「でも」

「…？」

「春宮さんこそ覚えておいて下さい。努力だけで恋が報われるなんて言葉は、恋をした事もされた事もない人間の戯言ですよ

自分を失くすくらい誰かを想っても、実らない恋もある。願えば叶う恋なんて夢物語みたいなもんです

貴方にもいつかそれがわかる日が来るかも知れません」

「月島さんにもそういった経験が？」
「……無いとは言いません」

「…そうですか。きちんと胸に留めておきます。そろそろ戻りましょうか？お昼からもよろしくお願いしますね」

「ねえ春宮さん」