排除

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立ち上がる春宮さんを私は呼び止めた 「…何でしょう?」 「実は私…翔介さんに振られたんです」 「本当ですか!?」 「おい、聞いてねえぞ!」 隣で驚く月島さんは無視して、私は話を進める 「翔介さんには、ずっと想いを寄せる人がいるんです」 「私じゃその人を超えることが出来ませんでした。恐らく貴方にも無理だと思います」 私の言葉に春宮さんの眉がピクリと動く 「花井、おまーー」 「…何故そう思うのでしょう?」 月島さんの声に被せて春宮さんが尋ねてきた 「その相手というのがまさに完璧を絵に描いたような人だからです。春宮さんでも霞んで見えるくらい」 「…素敵な方なのですね」 「はい。春宮さん如きじゃ到底太刀打ちできません」 「…是非一度会ってみたいものです」 「来週から会社に来るので会えますよ」 「同じ会社の方だったのですか…それは…楽しみですね」 不敵な笑みに、私も笑って返す 「打ち砕かれると思いますよ。そのどこからくるのかわからない根拠のない自信がね」 「競い合うつもりはありませんが… 春宮の姓を持つ者として、春宮の沽券は守りたい所です。では、先に行っていますね」 そう言うと春宮さんは私と月島さんを放って歩き出しそのまま店を出ようとした 「会計まだなのに」 「あ、ここは俺が出しとくわ」 「すみません…」 「お代はもういただいておりますので大丈夫ですよ」 レジに向かおうとした月島さんにウエイトレスさんがそう告げた 「い…いつのまに…」 ……抜け目ない女だーー本当に 「しかし花井。なんかさっきの言い方はまるであの女を風見にけしかけてるみたいだったぜ」 「そうですよ」 「…そうですよってお前…」 「月島さん。すみませんが…何も言わずに見ていて下さい…」 「花井……」 「ここから先はーー私も簡単には引き下がりません」 そう。私は毒を呑む この毒は必ず菜穂に害をもたらす うまく利用してやるんだ 菜穂でも春宮さんでもない、最後に翔介さんを手に入れるのは私なんだからーー
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