排除

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「すみません、少し村井製薬の大貫さんのところに行ってきます」 数十分が経った頃ーー 機を見計らう俺の願いが通じたのか、月島さんが課長にそう告げながらオフィスから出て行く これは 大チャンス!! 俺は書類を片手に颯爽とコピー機に向かう …フリをして佳純の元へとムーンウォークさながらにクールに、スマートに向かった すると 「…佳純、久しぶり。色々迷惑かけてごめんね?」 そんな俺よりも先に菜穂が佳純の元に行き声を掛けた クソ!タイミングわりいんだよ!! 今から俺が背中押してやるとこだったのに!空気読めよ! イライラしながらもとりあえず二人のやりとりを黙って見ておくことにした 「久しぶりだね菜穂。ちなみに迷惑かけてっていうのは…どの事かな?」 「…えっ?」 その返事に面食らった菜穂がたじろぐ もう一度、佳純が問いかけた 「どの事?」 「…えと……お見舞いに何度も来てくれたこととか、仕事のこととか…後…」 「後、何?」 「…鳥谷さんのこととか…」 菜穂がそう言った瞬間、佳純は静かに微笑んだ …そして俺はその笑顔を見て 背筋が凍った……… あのおっとりした佳純からは想像もつかないくらいの 冷たく無感情な笑顔ーーー こいつ…こんな顔出来んのかよ… てか何この雰囲気…超重くね!? 一触即発な感じなんだけど… 久しぶりに会ったんだろ?なんでこんなムードになってんだよ… 「菜穂、私に謝る暇があるなら少しでも仕事を進めた方がいいと思うよ?」 佳純は菜穂の顔も見ずにパソコンに向かいながらそう言った 「え…あっ、と…ごめん…。そうだよね…とりあえず仕事に戻るよ…帰り話せる?」 「いいよ。ごめんね何か嫌な言い方で。私はいいんだけど他の人がなんか思っちゃったら嫌だからさ」 そう言いながらも目は合わせない佳純 「あ…うん!わかってる!佳純に悪気が無いのは!ありがとね!」 菜穂は気まずそうに、そそくさと自分のデスクに戻っていく 意を決した俺はそのタイミングで佳純の元へ飛び込んだ 「佳純ちゃん大丈夫?今ちょっと見ちゃったんだけどさ、なんか険悪だったね?俺でよけりゃ相談乗るよ?」 ホラ 俺はお前の理解者だ 助けを求めていいんだぞ? 一人で考え込むのは嫌だろ?誰かと共有してえだろ? 胸貸してやるからよ 「…佐伯さん」 「ん?どうしたの?」 ーー釣れたな 「あの 私には一切近付かないでって言いましたよね?月島さんに言いますよ?後、下らない事言う暇あったら仕事中ですので仕事して下さい」 ………おおゥ…!! こいつ何?調子乗ってんの?お前なんか俺がちょっと本気で殴ったらヒイヒイ言っちゃう癖によ? あんま男舐めんなよブスが!今すぐ泣かしてやろうか!? …いや……落ち着くんだ俺。出来る上司は失礼な部下にも寛大さを見せるもんだ 俺は拳を強く握りながらも出来る限り穏やかに返した 「うわー、その言い方傷付くなぁ。俺好意で言っただけなんだけどなー…軽く傷付くなぁ」 「佐伯さんに関係あります?あとその薄ら笑いやめてもらえませんか?気持ち悪いんで」 …は??? こいつ、マジぶっ飛ばしてやろうか……!
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