排除

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「…どうして…そこまで…鳥谷さんの事ーーそんなに好きなの?」 「……私は…ーーー」 きっと 誰かを、本気で好きになることなんて多分ないと思っていた 恋愛漫画や恋愛映画にあるような【好き】は、私には絶対縁がないようなものだと いつも少し冷めた目で見ていた だけど初めて貴方を見た時ーー ああ、これがソレなんだって そう思えたんだ 追憶の中にいた貴方は 私の世界を 密かに塗り替えてくれたから ーーー 6年前ーー 重たい鞄を膝に乗せ、疲れた身体を座席に預け電車に揺られていた 高校生になっても下らない争いやいざこざは絶えない… 中学では毎日毎日誰かの顔色を伺うように生きる日々だった私はそんな日々にほとほと疲れ果てていた それならもう友達すら作りたくない そう思えるくらい私の神経は擦り減っていた 「お、空いてるじゃん!ラッキーラッキー」 「俺もすーわろ」 はぁ…またいつもの人達だ 鞄の他に巨大なスポーツバッグを下げた他校の男子学生が6、7人で電車に乗ってくる 毎日私と同じ時間になるのだけれどこの人達は基本的にうるさい 電車内なんだからもうちょっと静かにしてほしい それに数人の人は迷惑も顧みず荒々しくドカっと座席に腰を下ろす スポーツバッグも上に置けばいいのに足元に置くから邪魔で仕方がない この人達と同じ時間帯に帰るのがかなりのストレスだった でもこの人達の為に自分の帰宅時間をズラしたくはないのでこうやってここにいるわけだけど… 「来週の試合勝てっかな?」 「相手雑魚だろ。聞いたこともないような学校だったぜ」  「余裕余裕。なんなら俺左手封印するわ」 「ギャハハ、じゃあ俺左足封印するわ!」 「どうやって走るんだよ!」 「ケンケンで」 「ハハハハッ!!馬鹿じゃねえの!?」 この人達…全然面白くない話なのに何がそんなに笑えるんだろう 私が捻くれているのかーー皆必死に輪の中に入って無理して笑顔を作っているんじゃないのかと、そう思ってしまう 周りの波に流されながら生きている。そう思えてならない そういう姿を見るのが多分一番のストレスなのかもしれないな 「あのさ、ちょっといい?」 「あーん?どしたよ」 それまで黙り込んでいた学生の中の一人が急に口を開く 私の位置からは…その顔は見えなかった 「電車内なんだからもう少し静かにしようよ」 唯1人 周りの波に抗い流されない人間がそこにいた
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