排除

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「お前ノリわりいなぁ。いいじゃん別に悪い話してるわけでもないんだし」 「内容は関係ないと思う。とにかく降りるまではもう少し静かにしようよ。あとバッグ上に置かない?通行の妨げになるからさ」 「…チッ。はいはい」 「皆静かになぁ」 不思議とその子の一言で他の子達は一気に静かになった スポーツバッグもきちんと棚の上に仕舞っている 皆が言うことを聞くってことはグループの中心的な人なのかなと、そう思っていた いつもはいない人なんだろうか。ああいう常識ある人もいるんだ… その日はそれくらいの印象だった…… ーー次の日の帰りも学生達はぞろぞろと電車に乗ってきた そして数人の人達は昨日と同じようにふてぶてしく座席に座り大きな声で話し始める 今日は昨日の人はいないんだな 結局注意された時しか静かにしないなんて…ダサい人達 「にしてもよぉ。ーーの奴マジムカつくよな…」 「あいつ今日部活来てなかったな」 「学校も休んでたよ」 「なんで休んでたの?」 「知るか!どうでもいいし!」 「偉そうに注意してきやがってよ。練習中もいちいちうるせえんだよ」 「結構口出ししてくるよなあいつ。何様なんだか」 名前は良く聞こえなかったけど、昨日の人の悪口を言っているのはすぐにわかった …とてつもなく格好悪い人達だな 「ちょっと上手いからって調子に乗ってんだろ。てかあいつ自分が人望あると思ってんじゃねえの」 「ありえる。あんなやつーーと仲良くなかったら誰も言うこときかねえよ」 「俺あいつに試合中パスしたことねえんだよな。嫌いだから」 …そっか。昨日の人嫌われてるんだ 何でだろ…何故かわからないけど少しショックを受けている自分がいる 「それいいな!俺も真似するわ。今度から全員試合中あいつの事は無視しようぜ!?」 「可哀想だけどあいつの場合自業自得だよな。人間調子に乗ったらそうなるんだよ」 聞くに耐えない悪口が展開され続け私は心底苛々していた しかも音量はどんどん上がっていく 駄目、我慢の限界… 一言文句言ってやろう 私がそう思ったその時だったーー 「調子に乗った事はないけど。後静かにしようって昨日言ったよね?」 …あっ!? そこには昨日の彼らしき人物が、私服姿で立っていた そしてその瞬間、私は初めて彼の顔をきちんと見た ーーその顔を見て私の鼓動が強く跳ねる それは彼がイケメンだからじゃない めちゃくちゃカッコいいけど… いや、だって… さっきの話聞いてたんだよね… なのになんでーー そんなに堂々と相手の眼を見れるの? そんなに凛々しい顔で集団に立ち向かえるの…? 顔ではなくその表情が、私の胸を強く打ったーー 「おま…なんでここに…?」 「家の用事で休んでたんだ。今帰るところ」 「そ、そうか…」 あまりの凛とした態度に相手の方が物怖じしてしまっている そして一瞬にして場は静まり返った 「あのさ」 「えっ!?あ、何!?」 沈黙の中、彼が次に発する言葉を相手も そして私も 固唾を呑んで待った だけどその言葉は、想像を遥かに超えるものだった 「これ」 「…え…?なんだ…?」 「明日渡そうと思ってたんだけど、今日会えたから今渡しておくよ」 彼はそう言うと、手に持っていた袋を渡した 「へ?」 「倉田、前に膝痛がってただろ?これ良かったら着けてみてよ。用事ついでに買ったんだ」 「ま、マジか…わりいな…なんか。金…払うわ、いくら?」 「勝手にした事だからいいよ。合わなかったら捨てるか誰かにあげるかしてくれていいからさ」 「……サンキュ…な」 「みんなの分も買ってあるよ。膝の怪我の予防にも使えるからさ」 「わりぃ」 「助かるよ…」 ーーその光景を見た私はかつてないほどの衝撃を受けていた
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