排除

29/30
前へ
/549ページ
次へ
ーーー 「あれ、佐伯まだ残るの?」 時刻は19時を回っていて、オフィスには既に俺と本間さんしか残っていなかった 「あ、自分もう少しだけやって帰りますんで」 「はー、頑張るなぁ佐伯は。こりゃうちも将来安泰だな」 「いやいやまだまだっすよ俺なんて」 「そんなことないって。また暇な時飲みにでも行こう!色々話もあるだろうしさ」 別にオッサンと話すことなんて無いんだけどな…可愛い女の子ならともかく でもまあ本間さんは高いもん奢ってくれるしいっか 「是非お願いします!お疲れ様でした!」 「お疲れ様ー」 そうして本間さんはオフィスから出ていった … …… …ーーーーよし 俺は辺りに誰も居ないことを確認し、佳純のデスクへと近寄った 佳純は午後にスペアキーを課長から借りて引き出しを開けていた だけど始末書は書かされてたみたいだがな いい気味いい気味 鍵は後日また貰うんだろうが、大事になったら結構めんどくせえからな バレねえ内に先に返しとくとするか 俺はポケットから鍵を取り出し、佳純の小物入れの中に入れようとした 「何してるんですか?」 …!!!! 「うおあっ!!」 な、なんでここに… 「私のデスクの前で何をしてるんですか?佐伯さん」 佳純が…!? 「佳純ちゃん…か、帰ってなかったんだね。いや、あの…俺さっきトイレ行こうとしたらオフィスの前でデスクの鍵を拾ってさ!なんか昼に佳純ちゃんが困ってる話を人伝に聞いたからこうやって返そうとしてたわけ」 「そうなんですか。ありがとうございます」 「いやー…いいって」 なんとか誤魔化せーー 「て言うとでも思ってるんですか?全部見てましたから。 動画も撮ってますよ 貴方が私の鍵をポケットから出す所をね」 そう言って佳純は俺にスマホの動画を見せてきた 嘘だろ…!? 「な…っ!何を勘違いしてるんだよ!俺はただ親切でさぁ…!」 「昼からずっとこっちを見てたの気が付いてましたから。視線が気持ち悪いんですよ」 「ぐっ…!」 「今度こそ月島さんに言いますね」 「待ってくれ!月島さんにだけは言わないでくれ!!頼む!」 「…随分月島さんを怖がっていますけど、何でですか?」 「え…そりゃああの人は………昔から怖かったから…」 「…まあいいです、じゃあ言わないでおきます。その代わり私の言うことを聞いてもらえるなら」 「何!?聞くよ!何でも聞く!!だから許して…」 「…何でも?」 「…う、うん」 「じゃあ、協力してね。佐伯さん」 「…協力…って、何を…?」 佳純はニヒルに笑いながら、俺の耳元で囁いた 「ーー絶望を味わわせるんです」 「……誰に…?」 「私の大好きな親友…」 妖しくその瞳が光る ああ… 今、気がついちまった 俺は…今、どうしようもなく この女に引き込まれている… こんな顔をする女だったのか…こいつ 間違いねえ… 花井佳純は 紛れもなく ーーー悪女だ 「風見菜穂を、ぶっ壊すの」
/549ページ

最初のコメントを投稿しよう!

215人が本棚に入れています
本棚に追加