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猛襲
ーーー
「おはようございます岡本さん」
「おはよー」
朝一番、デスクに座ると私は深いため息をつく
「はぁ…どうしよ」
「…どしたの朝から、何かあったのお?」
隣にいる岡本さんに聞こえるように大きな声で漏らした
そしてその思惑通り岡本さんは私に声を掛けてきた
「…私の悩み聞いてくれますか?」
「力になれるかはわからないけど聞くだけ聞くから話してみて!」
岡本さんは興味津々な顔付きでそう言った
流石ゴシップ大好き人間だな
「実は…私こないだ菜穂を怒らせちゃって…菜穂って普段優しい分怒るとすっごい怖いんですよね。だから余計に許してもらえなくて…」
「えー、風見さんと喧嘩しちゃったの?あんなに仲良かったのに。でもあの子復帰してまだ3日でしょ…何で早々にそんな事になったのよ?」
「はい…内緒なんですけど
私好きな人がいるんです。でもその人は菜穂の事が好きだったんですよ…
それで私、菜穂に彼と付き合わないでってお願いしたんです…
そしたら菜穂が……
なんで私にそんな事言われなきゃいけないんだって怒り出して…多分菜穂もその人の事が好きだったみたいで、彼と付き合うつもりだったんだと思います
菜穂なら譲ってくれると心のどこかで思っちゃってた私が甘かったーー
恋愛に友情なんて関係ないですもんね…」
「同じ人を好きになっちゃたって、もしかして月島さんの事かしら?」
「え?違います。何でそうなるんですか」
「え、違うの?てっきり二人ともそうなんだと」
「その相手の方は岡本さんが知らない方なんですよ」
「そうなの。まあだけど風見さんもそんな事で怒らなくてもいいのにね…お願いした花井さんにも問題はあったのかもしれないけど普通なら謝るところよね。だって親友の好きな人奪っちゃうんだから」
「…私昔から菜穂に何でも甘え過ぎてたから…恋愛でもそんな感じを見せたら流石に菜穂も怒っちゃっても無理ないですよね」
「うーん…しかしあの風見さんがねえ、友情より恋愛をとるなんて信じられないわぁ」
「こうなったらきちんと彼の事は諦めて菜穂と仲直りしたいんですけど…今は難しいですよね」
「そうね。こういうのは時間を置いたほうがいいのよ…時間が関係を修復してくれる事だってあるんだから。今は無理に話しかけようとしないでもう少し待ってみたらどうかしら」
「そうですよね…ありがとうございます!聞いてもらって少し気が晴れました!岡本さんに話して良かったです!」
「そう言ってもらえたら嬉しいわぁ。また何か進展あったら教えてね」
「はい!」
岡本さんは歩く広告塔みたいな人だ
きっとこの話を誰かに話すだろう
私はそっと種をばら撒くだけでいい
いずれ噂は尾ひれをつけてこの会社中に広まっていく
そうなればその話が本当かどうかなんてもはや関係ない
駆け回る噂は真贋問わず渦を巻き
呑まれた者は沈んでいくしかない
ひたすらに深く 深くね
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