猛襲

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さて、と 上手くやって下さいよ。佐伯さん 私の視線の先にいる彼は書類を手に本間さんの所へと歩いて行った 「すみません本間さん。ちょっとこの企画書見てもらっていいですか?」 「俺に?いいけど何で?」 「いや…昨日本間さんに言われた言葉嬉しくって…見て欲しくなったんですよ。添削あればお願いします」 「ハハッ、そう言って貰えると俺も嬉しいよ。どれどれ…… うん!完璧だ!流石遅くまで残業してただけあるなぁ!」 「いやぁ、嬉しいっす!良かったらまた飲みに連れてって下さいね!!」 「お、じゃあ今晩でも行く?完成記念って事で」 「いいんすか!?ありがとうございまーす!」 「今日は定時かい?」 「そうっす」 「俺も定時だし丁度いいね。んじゃ終わったらって事で」 「はい!お願いします!…あ!あと本間さんにだけ言っときたいんすけど」 「…ん?」 「いきなりなんですが、昨日花井さんが鍵失くしてたじゃないですか?」 「ああ、引き出しのね。不運だったなあれは…まあでもスペアで開けられたし良かったよね」 「あの鍵どこにあるか俺知ってんですよ」 「え!?」 「実は昨日たまたま見ちゃったんすよ」 「見たって、何を?」 「これですよ」 「……これってまさか…引き出しの鍵?」 「はい。実はこれ昨日ゴミ箱から拾ったんです」 「何でゴミ箱にこんな物が…」 「それなんすよ。見たっていうのは…これを捨ててる人間を見てしまったんですよ」 「ええ?それ…大問題だぞ!」 「はい。それがね…信じられないかも知んないですけど これを捨ててたのは菜…風見さんなんですよ」 「…風見が!?」 「これ他言しないように頼みますよ」 「いやしないよ。そんな事出来るわけないだろ。ていうかそれ花井に返してやれば良かったんじゃないか?」 「もうスペアで開けた後でしたし、俺が疑われるのが怖くて黙ってたんですよ…だからこうして本間さんにだけ相談したんです…」 「…なるほど。しかし一体何で…」 「なんかあの二人今喧嘩してるらしくって…ちょっとでも流石にこれはやり過ぎっすよね」 「喧嘩にしては度が過ぎてるよ。それに下手をすれば会社にも損失を与えてたかもしれない。看過できない事態だよこれは」 「でも証拠がないんですよね。本人に訊いても絶対にシラを切られますし」 「だが一度訊いてみなければ…」 「あ、いや!今回だけは見逃してやってくれませんか!?次何かあったら風見さん本人に訊くってことで」 「……仕方ない。わかったよ、とりあえず俺も風見には目を光らせておくよ」 「ありがとうございます。風見さんも多分出来心だった筈なんで」 「風見がなぁ…ちょっと信じ難いものがあるけどな…女性の世界はわからないからねえ…」 「はは、怖いっすよね」 「じゃあ今日夜お願いしますね!」 「了解。至極の一杯の為にお互い頑張ろうな!」 自分のデスクへの帰り際、佐伯さんは私にだけ見えるように親指を突き立てた と同時にしたウインクがめちゃくちゃ気色悪かった
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