猛襲

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「…何…言ってるのよ 佐伯さんが言ったんじゃない!!トイレに行くから青い書類をシュレッダーにかけてって!どうしてそんな嘘つくんですか!?貴方に頼まれたから私は…!」 「ちょ、落ち着いてよ菜穂ちゃん!何を言ってるかさっぱり分からないんだけど!!ちゃんと説明してよ!」 …まさか 佐伯さんの言っていた書類が課長のデスクにないということは 私を嵌めたの…!? 何で…? 私佐伯さんに何かした? 意味がわからない… どうして… 「やっぱり嘘だったんだね」 「…嘘じゃない!」 「菜穂…プライベートで私にどんな想いを抱いてても仕事は仕事なんだから。私の事は嫌いでもいいよ…でもあの企画書は春宮さんや他の人達皆の力で作り上げられた物なんだよ!私だけの物じゃないの!なのにそんな事するなんて…見損なったよ」 違う…そんな事私はしない…! 「何でそうなるのよ…私は絶対にそんな事しないよ!佳純ならわかるでしょ……どうして…」 「ちょっと待つんだ。よくわからないが…二人がプライベートで何があったかは今は置いておこう。重要な書類をシュレッダーにかけたのは事実なんだ、まず目を向けるのはそっちだろう。花井、バックアップは取ってあるのか?」 「一応とってあります。少し改訂する前のやつですが」 「よし、なら急いでもう一度作り直してくれ」 「分かりました」 「他の仕事は僕が手伝うよ。遠慮なく回してくれ」 「すみませんが本間さんよろしく頼みます。風見…君はとりあえず一度頭を冷やした方がいい。今日はもう帰りなさい」 「課長!わざとじゃ無いんです…信じて下さい!」 「分かってる。風見がそんな事する人物じゃ無いというのは。だけどそんな顔じゃ今日は仕事にならんだろう…だから今日の所はもう帰って一旦落ち着きなさい」 「…分かりました」 課長に言われるまま、私は自分のデスクを片付け始める そしてこっちを向いている佐伯さんを思い切り睨みつけた 許さない…! 絶対に…っ 何があろうとあんただけは許さない…!! 悔しさで込み上げた涙がデスクの上にポタポタと零れ落ちる 何で私がこんな目に遭わないといけないの… 私が一体… 何をしたのよ… 「風見。泣くな」 後ろから掛けられたその声に、私は振り返る 「…月島さん」 「俺はお前の味方だ。佐伯は俺がきっちり躾けとくし課長と本間さんにもちゃんと話しておくから、だからもう泣くな。水分が勿体ねえぞ」 ハンカチを渡してきながら月島さんはそう言った 「…っふ、なんですかそれ」 「折角帰れるんだからラッキーってくらい思ってりゃいいんだよ。な?」 柔らかい笑顔… やっぱり…月島さんだけは変わらないでいてくれるんだ… 「ありがとうございます…」 そう小さく呟いた。聞こえてないかもしれないけど 「ん」 月島さんは左手を上げて返事をくれた しっかり聞こえてるし… 「…では今日は先に失礼します」 涙を拭き、帰り支度を済ました私は突き刺さる視線を見て見ぬ振りをしてオフィスを後にした
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