猛襲

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「大丈夫ですよ。春宮さんの名に傷をつけるような事はお願いしませんから ただ貴方には、菜穂と仲良くなってもらいたいだけです」 「…どういう事でしょう?仲良くなって最終的には裏切れ。ということですか?」 「違います。本当にただ普通に菜穂に接して仲良くなるだけでいいんです。心細くなっている菜穂の心の支えになってあげて下さい」 「それの何が貴方に協力していることになるのです?」 「人間って、一人でいることに慣れてしまうと強くなってしまうでしょう? 菜穂が吹っ切れて孤独でも生きていける強さを手にしたら意味がありません だから春宮さんにはそれを阻害してもらいたいんです」 「なかなかに悪趣味な話ですね。弱さを保たせると…奪う為に…ですか」 「脆くして脆くして…触れただけで壊れちゃうような…そんな人間に仕立て上げるんです。完璧という鎧を剥ぎ取って…私の気持ちを彼女にもわからせる為に」 「…独善的ですね。恐らくいい死に方しませんよ花井さん」 そんな事言われなくてもわかっている 私は地獄に落ちるだろう それくらいもう汚れきってるから 「そっち側にいる貴方には分かるはずありませんよ」 「ええ。ですね。分かりかねます…何せ、生まれてこの方思い通りにいかなかったことが無かったので」 「でしょうね。そういう顔してますよ」 「……私達がここで啀み合っても仕方ないですし、やめにしましょう。貴方の言う通りにしますよ」 「ありがとうございます」 「では次は」 「…?」 「私にとってのメリットを提示していただけませんか?まさかただ働きしろとは言いませんよね?」 …強欲な女 「結果的には春宮さんにもメリットがあると思いますけどね」 「もっとわかりやすいメリットを頂けませんか?」 彼女の問いに私は黙り込み、暫く考え答えた 「……さんまです」 「…え?」 「翔介さんが一番好きな食べ物ですよ。以前聞いて来たでしょう?」 私がそう言うと 春宮さんは口元を手で押さえて吹き出した 「…ふっ、フフフッ!アハハハ!まさかそんな古い話を持ち出されるとは…随分根に持たれていたんですね」 何がおかしいんだろう… 「別にそういうわけじゃありませんけど。有益な情報かと思いまして」 「アハハハッ!さんまですか…!よく覚えておきます!いいですよそれで…協力します。フフフ。あーおかしい」 おかしいのはあんたの頭でしょ まあとにかく協力してくれるならなんでもいいか 「では今日から私達は改めて味方同士という事でお願いしますね?花井さん」 変な人だな… 「ええ…よろしくお願いします。春宮さん」 そして私達は改めて握手を交わした 互いの感情を一切抜きにした、ただ利害の為だけの友好のしるしに 何にせよ、これで外堀は固められた。あとは… 「いきなりすみません、今日の夜空いてますか?」 私は月島さんのデスクに向かい尋ねた 「…花井」
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