猛襲

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ーーー 「風見さん、一緒にお昼行きませんか?」 正午の報せと同時に私の元に来てくれた春宮さん 「あ、はい!」 私はすぐに立ち上がり春宮さんの隣に立った 「さっきはありがとうございます…」 「風見さん」 春宮さんは私の方をジッと見つめてくる 「…何ですか?」 「…二人の間だけ敬語はやめにしません?私、風見さんと友達になりたいんです」 「でも…」 「今から敬語はなしで!ね!?」 「わ、分かりました。あ、わかった!」 慣れない感じでそう返した私に、春宮さんは微笑んでくれた …いい人だな 綺麗だし、仕事も出来るみたいだし、こういう人が本当の完璧な女性って言えるんだろうな そういえばいつか佳純が言ってくれたなーー 『私も菜穂みたいに何でも出来る完璧人間になれたらな』 ……私は欠陥だらけだよ。佳純 見せかけばっかりで、自分の中のコンプレックスに呑み込まれちゃってるんだよ 狡くて弱くて醜い私に、そんなふうに言ってもらえる資格なんて無かったんだよ ーーーー 「では今はお付き合いされてる方とかはいないの?」 私の向かいで蕎麦を啜りながら、彼女は尋ねてくる 「いないよ」 「菜穂さんならきっといると思っていたのだけれど」 菜穂さんという呼ばれ方、なんだかむず痒さを感じてしまうな 「春宮さんこそそういう相手いないの?」 「…実は 以前会社の親睦会で知り合ってからずっと好意を抱いてる方がいるのだけれど」 「片想いなの?」 「…ええ。それでね…その方は恐らく菜穂さんの知ってる方だと思う」 「…誰ですか?」 途轍もなく嫌な予感がする 「鳥谷翔介さんという方なの」 「…え…?」 予感は見事に的中した ーーまた、鳥谷さん…… どうして 何で彼なの… まるで呪いみたいに…彼は私の世界から離れてくれないーー あの日からずっと…私を取り巻き続けるんだ 「…だけど鳥谷さんは佳純の…」 「花井さんとは別れたと彼女の口から聞いたわ。何も問題は無いと思うのだけど?」 「…私は、やめておいた方がいいと思う」 「…応援してはくれないの?まさか菜穂さんも好意を抱いてる…とか?」 「違う!」 ーーだって彼は… 『…何にも知らないんだね…』 『翔介さんが菜穂を苦しめてたストーカーだという事を』 私の脳裏にこびりつく、佳純の放ったあの言葉 それを知っている私が応援なんて ……出来る筈がない
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