猛襲

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ーーー 「今少しお時間宜しいですか?」 「…何ですか?」 パソコンと睨めっこしている私に、突然春宮さんが声を掛けてくる 「少し休憩しましょう」 時計を見ると時刻は15時を回っていた 「…分かりました」 私は春宮さんに連れられ休憩室まで足を運んだ 自販機でレモンティーを買い喉を潤した後、春宮さんに尋ねる 「何か話があるんですよね?」 私を誘うということはそういう事なんだろう 「ええ。風見さんと鳥谷さん、お二人は一体どういった関係なんでしょう?」 「…どういう意味ですか」 「先程鳥谷さんについて話していた時に風見さんから暗い印象を受けたので、二人の間で何かあったのかと思ったんです」 「…さあ、何かあったんですかね。私には分かりませんけど」 シラを切る私に眉をひそめ、春宮さんは更に問い詰めて来る 「…花井さん。これでも私は精一杯協力している方なんですよ?それくらい教えていただいて然るべきだと思うのですが」 …面倒くさい人 「……二人は中学の時からの知り合いなんですよ。菜穂はその時に翔介さんに傷付けられたみたいです」 「傷付けられた?」 「陰で悪口言ってるのを聞いちゃったみたいですよ。本心ではなかったらしいですけど」 「…成る程。それを未だに引き摺っているという事でしょうか…それにしても根が深い様ですね」 確かにそうだ 実際のところ 菜穂はつい最近まで彼と向き合えずにいたんだ そう思うと私の話はきちんと整合性が取れている これ以上のことを話す必要は無いな 菜穂の口からあの話が出ることは恐らく無いだろうし ーーー私は多分、怖いんだ この人にもしソレを知られた時、この人がソレを受け入れてしまったとしたら 私と翔介さんとを繋ぐ唯一の絆が断たれてしまいそうな気がするから… 歪で真っ黒な絆 そんなものでもーー私は失いたくない 翔介さんを、その心の闇ごと愛せるのは私だけでいいんだ 「しかし…なんと言いますか」 足を組み、溜め息を吐いて彼女は続けた 「どうにも私は蚊帳の外みたいですね」 「そんな事ありませんよ。だって春宮さんは翔介さんのお兄さんに好かれてるじゃないですか」 「そこは確かに…何せ鳥谷家と春宮家は良き仕事相手ですので」 「それだけで十分じゃないですか」 「ですが、鳥谷さん自身がお兄様を嫌っているのでそこは然程利点ではない気もしますが」 あの暴君みたいな兄を味方につけるだけでだいぶ心強いと思うけど 「では決めました!突然ですが、今日鳥谷さんに会いに行って来ます」 「…へ?」
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