世界

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誰もが 背徳に塗れて生きている その半生の中で 後悔と痛惜を繰り返しながら 少しづつ自らの過ちを省みる そしてその道中で また新たな背徳が生まれ続ける ーーー 「鳥谷さーん。この後二人で抜けちゃいません?」 賑わいを見せる居酒屋の隅っこで 僕は今、会社の後輩に言い寄られている 「……ごめん。今日は疲れてるからもう帰るよ」 「駄目です!帰しません!鳥谷さん…知らないわけじゃないですよね…私の気持ち」 ーー誰も知るわけがない。他人の気持ちなんて 「私前から鳥谷さんの事ずっと好きだったんですよ?私じゃ駄目ですか?」 「…ごめん。彼女いるんだ」 「嘘です!最近別れたの知ってますよ!」 ーー何で知ってるんだよ… 「見てればわかるんですっ!女は!私ずっと我慢してたんですから!!だからねっ?お願いします!お試しでもいいから!」 「…ハハ、弱ったな」 「オイ聞いてくれよ!こいつ彼女の家から彼女の下着盗んでんだってよ!」 「言うなよ馬鹿!!」 「気色わりーな!変態じゃねえかよ!」 ふと、近くの席で騒ぎ立てる若い男達のそんな会話が耳に入ってきた 「…気持ちわるー…何に使うつもりなんだろ…それに、彼女なんだったら隠れてそんな事せず正直にちょうだいって言えばいいのに…鳥谷さんもそう思いません?」 後輩の子は顔をしかめながら僕に尋ねてきた 「そうだね……」 ーー彼女の下着で気持ち悪い変態呼ばわりされるなら、彼女でもない人の物を盗み続ける奴は一体何呼ばわりされるんだろう きっと生きる価値も無いクズだと、罵られ後ろ指を差されるんだろうな だからこそ、誰もが上手くそれを隠して生きている 人よりも遥かに歪んでいる僕を受け入れてくれる世界は どこにもない 「すみません部長。先に失礼させていただきます」 「お!鳥谷!帰るのか!?気をつけて帰れよ!?」 「鳥谷さん!!」 「ごめん…今は誰とも付き合う気はないから」 冷たく突き放すように言い放ち、立ち上がりそそくさと店を出た 彼女もきっと本当の僕を知ればさっきの男達に向けた目と同じものを僕に向けるだろう こんな背徳と罪悪の海に浸かりきった僕を愛してくれる人間なんて いるわけがないんだ …彼女以外は 冬の夜風に吹かれながら、月を見上げた そして静かに彼女の事を思い浮かべながら帰路に就く タクシーから降り、マンションの前に差し掛かった時だった ポケットの振動に気が付き、携帯を取り出すと知らない番号から着信が入っていた 誰だろう… 出たくはないけど飲み会で忘れ物でもしていたら困るので、仕方なく出ようとした 通話ボタンを押そうとしたその時 「鳥谷さん!」 「…な、何でここに??」 彼女は現れたーー
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