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それは僕を水底へと引き摺り込む
僕にとって最も根深いーー
「貴方に話があってきました」
それを手にする人物
……ーー風見…
震える携帯の着信を消し、僕は尋ねる
「話…?それより体調はもういいのか?」
もう何日も彼女に会っていなかった
最後に会ったのは病院で、風見にもう来ないでと突き放された日だ
それ以来は風見のお母さんが間に立ち僕は病室に入れてもらえなかった
理由は分かっていたけど
それでも僕は諦めず何度も病院へと通った
そんなある日、風見のお母さんに問い質された
ーーー
「鳥谷さんは、菜穂の事をどう思ってるの?」
…風見のお母さんにそう訊かれたとき
返答に迷った
彼女に対して、人に答えられるような綺麗で純粋な感情を持っていないから
「大切な人です。恋人の友人というのを抜きにしても」
それだけ伝えた
「…そうだったのね」
すると、風見のお母さんは僕に向かって^ - ^深々と頭を下げた
「私の考えが至らなかったみたいでごめんなさい、とても反省してるのよ。佳純ちゃんの事をもっと思いやるべきだったわよね…」
「佳純は、理解してくれていました…」
口から咄嗟に嘘が溢れる
それを見透かしたかのように風見のお母さんが言った
「男が思うより女は嫉妬深いものよ。あの二人がどれだけ強い友情で結ばれていても、恋愛が絡むと友情は簡単に壊れちゃうの」
でも僕達の関係はもう終わっているんです。と
そう言いたかった
だけど僕は…
「分かりました。もうお見舞いには行きません…二人きりにもならないように気を付けます」
不思議とそれを受け入れていた
「…ごめんなさいね、鳥谷さん」
ーーー僕の意思や意識を
全て無視するように
僕は選択したんだ
過去ではなく、現在をーーー
僕の心に棲まう彼女の為に
もう風見には会わない…
そう決めたんだ……ーーー
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