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それなのにまさか
彼女の方から僕に会いに来るなんてーー
その姿を見ていると、自分の中に揺らぎが生まれてくるのを感じる
「…もう体調は大丈夫です。色々すみませんでした」
「あ、ああ。気にしてないよ…それより話って言うのは…?」
「…少し訊きたいことがあって来たんですが」
「……何?」
風見の目付きが険しい事から、良くない話だと言うのはすぐにわかった
「…中学の時に鳥谷さんと会わなくなってから今日までの間
貴方は私に会いに来たり…いえ……私の姿を見に来たりしましたか?」
「えっ…?」
突然投げ掛けられた質問に僕は思わず言葉を失った
遠回りな尋ね方だけど
風見は確実に僕を疑っている
僕の事を…ストーカーだと思っている
「いや、行ってないけど…急にどうしたの?」
「じゃあ質問を変えます。鳥谷さんは、権藤っていう男性を知っていますか?」
「…いや、知らない」
「私はその人にストーカーをされ、家の中まで荒らされる所でした。幾つかの物も紛失しているので、恐らくはその人に盗られたんだと思います」
「…そんな事があったのか」
「だけど私はその人に見覚えも無く接点もありませんでした。だからずっと不思議に思っていたんです…だけどそれを誰かに指示されてやったんだとしたら、辻褄が合いますよね?」
「それを僕が指示したと言いたいんだね」
「…はい」
そうか
…風見はきっともう確信を持っている
僕を自身のストーカーだと分かっていて訊いてきているんだ
…佳純が、バラしたのかな
…仕方ないな。僕はそれだけの事をしたんだ
だから僕の返事はもう決まっている
「ーーー僕は何も知らないよ」
この醜く薄汚れた、最低の嘘を
僕は守り抜くーー
いつかはバレるかもしれない
だけど、僕から明かすわけにはいかない
「…隠さないで下さい!もう分かってるんですから!」
「誰かに訊いたの?そういう話を」
「え…っ?いえ、そういうわけじゃありません。ただの私の勘です」
思った通り、やっぱり君は佳純を庇うんだね…
だとすれば君が望む答えには永遠に辿り着けはしない
情を捨てなければ、真実には辿り着けないんだーーー
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