世界

6/21
前へ
/549ページ
次へ
ーーー 待って…鳥谷先輩…私…まだ貴方の事好きなんです! は?やめてくれよ気持ち悪い ……え? そんな事絶対人には言わないでくれよ? どうして!?私の事好きって言ったじゃない! 嘘に決まってるだろ。わかれよ そんな…信じてたのに… お前みたいな女誰が好きになるかよ 勘違い女ーー 「…………勘違いさせてんのはそっちでしょ!!」 「…はぁ……最悪」 飛び起きて自室を見渡し、夢の中にいた事に漸く気が付く しかもよりにもよって…中学の時の夢を見るなんて 昨夜の夜の事と、中学の思い出がごちゃ混ぜになってしまったからだろうな 後味が悪く、底無しに憂鬱な夢だった ーー簡単には、切り捨てられそうもない 自分の中に燻る火を掻き消すように、私は顔を洗い身支度を整えた こんな気分の中、より憂鬱な場所へと向かわなければいけないなんて でも休んで誰かに迷惑を掛けるのも嫌だし… それに今休むと……吉村さんの話を認めたみたいな気がして意地でも休みたくない 私は何一つ悪くないんだから、堂々としていよう! 言いたい人には言わせとけばいいんだ! ーーーー 「おはよう菜穂さんっ!」 「おはよう春宮さん!」 会社の前で、屈託の無い笑顔を私に向けてくれる春宮さん 辛い事を言われてもこの人がいてくれるからまだまだ頑張れそうな気がするよ…! 「昨日はよく眠れた?」 「あ、うん…!眠れたよ」 胸のつかえが一つ取れたからか、昨日は泥のように眠っていた 「それは良かったわ。何かあったらいつでも連絡してね?」 「…ありがとう」 「…あら、おはようございます。花井さん」 振り返ると、後ろに佳純が立っていた 「おはようございます」 「おはよう…」 「おはよう菜穂」 意外にも佳純は普通に挨拶を返してくれた 無視されるかと思った… 佳純の考えている事が今は何一つわからない 私を追い抜いていくその背中を見つめても 浮かぶのは暗い影だけだった 「おはようございます」 エレベーターを降りてオフィスに着いて挨拶を交わす私を待ち受けたのは 「……」 冷ややかな視線と沈黙だけだった まあ想像していたけど… どうせまた吉村さんが私の悪口触れ回ってるんだろうな なんてな事を考えながら更衣室まで向かった 「ハデな下着ー」 「…はい?」 着替えていると背後から悪口が飛んでくる 「いつでも勝負下着なんだ!やっぱり猛者は違うわ」 「見習わないとねー!」 鏡越しに見えたのは、吉村さんと仲良くしてる田宮さんと横峯さんだった 二人とももうアラサーなのによくそんな幼稚な悪口言えたものだ 言ってて恥ずかしくないのかな
/549ページ

最初のコメントを投稿しよう!

215人が本棚に入れています
本棚に追加