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「悪言と一緒に口から品性も溢れ落ちちゃってますね」
「なっ!?」
私の隣にいた春宮さんが澄まし顔でそう言った
「吉村さんにも言ったのですが、やっぱりこの会社ではイジメがあるみたいですね」
「イジメなんてないですよ?なんでそう思うんですか?風見さんの服のセンスを褒めただけなんですけど?」
「あ、そうなんですね…すみません、理解力に乏しいものでつい勘違いを…」
「春宮さんはまだ来て日が浅いんで私達が仲良い事知らないですもんね!仕方ないですよ!」
「そうですよね…私も早く皆さんの輪の中に入りたいです」
「これから仲良くしていきましょうよ!ね!」
「ありがとうございます!田宮さんのような
メイクの上手い方とお友達になれたら多くの男性とも仲良くなれるでしょうしとても嬉しいです!」
「……は?」
「その異性を喜ばせるメイクの仕方、是非ご教授頂きたいです!」
「あんた…馬鹿にしてんじゃないわよ!!」
顔を真っ赤にしてわなわなと肩を震わせながら田宮さんは怒鳴った
「ちょっと杏里やめときなって!まずいよ…」
「取引先だからとか関係ないわよ!喧嘩売って来たのはこいつからなんだから!私が手出せないと思ってみくびってんのよ!望み通り痛い目遭わせてやろうか!?」
怖…前に田宮さん元ヤンだって聞いたことあるけど本当だったんだ…
「構いませんが
私、家柄のせいですかね…昔から暴行される事が多いので空手を習わされたんですよ。ちなみに三段です…田宮さんがもし万が一誤って私に傷をつけてしまった場合私も誤って田宮さんのその綺麗な鼻を曲げてしまうかもしれません
…どうされます?」
にっこりと笑み、春宮さんが手を前に出すと、田宮さんはたじろぎ後退りする
「あんた…覚えてなさいよ!いこ!」
捨て台詞を吐きながら二人は更衣室から出て行った
「…春宮さん、空手強いんですね」
「ふふ、嘘に決まってるじゃないですか。まんまと信じちゃって可愛い方ですよね」
…春宮さんも相当怖いな
でも私のせいで、春宮さんまで確実に彼女達に目をつけられてしまったのがとても申し訳ない
「行きましょ、菜穂さん」
「う、うん」
春宮さんに続いて更衣室から出た時、佳純と目が合う
「…頼もしい味方ができて良かったね菜穂」
すれ違い様に耳元でそう囁かれ、背筋に悪寒が走った
ずっと見てたのか…
佳純…田宮さんより春宮さんより
私は今、佳純が一番怖いよ……
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