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「私の事よりも、花井さんには他に気を配らなければいけない事があるのでは?」
「仕事の話ですか?」
「それもありますが、風見さんの件ですよ。一人注視すべき方がいるでしょう?」
「あー…月島さんですか」
「はい。あの方がいる限り風見さんを完全に孤立させるのは不可能ですよ」
月島さんは私の邪魔はしないと言っていた…それを疑うわけじゃないけど、万が一は考えた方がいい
月島さんには悪いけど…ちょっと乱暴なやり方でいかせてもらおうかな
「…そういえばもうすぐクリスマスですよね」
「……そうですね」
脈絡もなく切り出す私に、それがどうしたと言わんばかりの顔で春宮さんは返した
「うちの会社ってクリスマスには特別力を入れてるんですよ」
「なるほど。クリスマスコフレですか」
「はい。流石ですね」
クリスマスコフレとは、クリスマスに売られる限定コスメセットの事だ
我が社では毎年、全社員が総力を挙げクリスマスコフレの販売に注力している
「人気なんですよ。うちのクリスマスコフレ」
「そういえば名聖堂さんのコフレは毎年すぐに売り切れてしまいますね。ですが…それがどうしたんですか」
「この企画部でもコフレの原案を全員が提出しなければいけないんです。そして、それぞれが考えた案を発表する大規模なプレゼンがあるんですよ」
「あら!面白い取り組みですね。選出された方には何かいただけるんですか?」
「カタログと金一封くらいですね…まあ今はそれは置いといて、そのプレゼンの時に仕掛けようと思ってるんですよ」
「仕掛ける?何を?」
「教えるので協力してもらえませんか?」
「…それは内容によります。ですが私にメリットは一切ありませんよね」
「…菜穂の蒼ざめた顔見たくないですか?」
「…花井さんは私を何だと思ってるんです?私は風見さんに何の恨みも嫌悪感も持っていないのですが」
「月島さんにならどうですか?」
「…!」
明らかに体が反応する春宮さんを見て、わたしはニヤリと笑って続ける
「以前色々言われて内心腹立ってたんじゃないですか?」
月島さんの春宮さんに対する敵愾心のようなものは、恐らく彼女も感じ取っているはず
この人は自分に敵意を剥く人間を絶対に好きにはならない
従順で操りやすい菜穂みたいな子が好きなんだから
「……とにかく、内容を先に話してみてください」
ほらね
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