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「田宮さん、おはようございます」
「おはよう花井さん、どうしたの?」
朝の就業前、私は休憩室でタバコを吸っている田宮さんの元を訪ねた
隣では堂々とした出立ちで横峯さんがタバコをふかしている
昨日の今日で頼られるのが嬉しかったのか、田宮さんは笑顔で答えてくれた
「実は…田宮さんにお話を聞いてほしくて」
「話?いいよ!何でも言って!」
「菜穂の…風見さんの事でなんです…」
「何!?あいつにまた何かされたの!?」
「いえ…そういうわけじゃないんですけど…実は更衣室で風見さんが田宮さんの事を話してるの聞いちゃって…」
「…何て?」
うわぁ、怖い
一気に休憩室の空気がひりついた
「あのですね…もうすぐコフレのプレゼンがあるじゃないですか?その話をしていたんですよ。
そしたら去年の田宮さんのコフレについて言い出して…」
「…それで、何て言ってたの?」
「…えっと、田宮さんの感性は古いって…色も形も昭和の女丸出しだって言ってました。あんなんじゃ誰も買うわけないから予算の無駄遣いだって…センス無いからやめたほうがいいんじゃないかとも…」
「うわ、きつ…」
「…ちょっとあいつ殴って来るわ」
「えっ!!あっ!ちょっと待ってください!」
私は顔を真っ赤にして立ち去ろうとする田宮さんの腕を掴んで制止する
行かれたら私が困る。嘘なのに
「離して花井さん。あいつの顔面血まみれにしてやらなきゃ気が済まないわ」
だから一々言うことが怖いんだって
「殴るのは良くないですよ!多分風見さんは手を出させて田宮さんを陥れようとしてるんですよ。クビになっちゃったらどうするんですか!」
「そん時はそん時だよ。言われっぱなしで黙ってられるほど私優しく無いからさ」
「…田宮さんに今いなくなられちゃ私…寂しいです」
「そうだよ杏里やめときなよ。あんな子のためにクビになったらバカらしいよ」
私と横峯さんの言葉で少しだけ冷静さを取り戻したのか、田宮さんの体から力が抜けた
「で、思ったんですけど…直接手を出さなくてもやり返せる方法を考えましょう!私も手伝いますので」
「…そんな方法あるの?」
「…私に一つ考えがあるんですけど聞いていただけますか?」
「考え?」
「この場所じゃ誰かに聞かれちゃうかもなので、良ければお昼外で話せませんか?」
「いいよ。じゃあ昼一緒に食べよっか」
「私も行くよ。なんなら協力するし」
「ありがとうございます!田宮さん、腹立つかも知れませんがまだ抑えてくださいね?きちんとやり返せる場面が来ると思いますんで」
「分かったわよ。なんとか我慢するわ…本当は今はらわた煮え繰り返ってるけどね」
「すみません…じゃあまたお昼に」
そう言って私は休憩室を後にした
そして次はそのまま佐伯さんの所へと向かう
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