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数日後ーーー
ーー社内プレゼンテーション当日
全部署の代表者が大会議室に一斉に集い荘厳な空気が場を支配していた
「…今年も人多いよな。毎年これが一番嫌なんだよな」
私の隣にしれっと座る佐伯さんがそう呟いた
「…今年は面白いと思いますよ」
「…約束は全部守ったぜ佳純。今日の夜、俺のうちに来てくれよ?」
「まあまあ、まずは計画を無事に遂行してからですよ。まだ安心は出来ませんよね」
「大丈夫さ…気付いてねえよ…絶対」
…確かにそうだろう
私の計画は誰にも気付かれていない筈
失敗は万に一つもあり得ない
春宮さんも田宮さん達も上手く私の作戦を実行してくれた
「では続きまして、風見菜穂さんお願いします」
「はい」
私や佐伯さんよりも先に名前が呼ばれた菜穂は壇上へと上がった
壇上の後ろには巨大なスクリーンがあり、企画書が拡大されて映せられる様になっている
書面とは別に、企画書は各々のパソコンのフォルダに保存しそれを社の共有ファイルに転送している
「よろしくお願いします。えー、今回私のコフレのテーマなんですが、冬の桜をイメージしてみました
春の桜はピンク色をしていますが、冬の桜は雪を纏ったかの様に白い色をしています
なので私は今回外装の全てに白い桜の花びらをデザインすることを決めました。イメージ図があるのでこちらをご覧下さい」
菜穂はスクリーンの方へ向きマイクを手にしながら話を続ける
そしてパソコンを動かし、共有ファイルに用意しておいたフォルダを開いた
「このように背景色はシルバーカラーにし、そこに白い花びら…を……」
突如話していた菜穂の動きが止まる
そして菜穂は今まで見たことないくらいに青ざめた顔で
愕然としながらスクリーンを眺めていた
「何…これ…」
それを見ていた他の人達も一斉にどよめいた
スクリーンに映し出されていたのは
菜穂が社内のあらゆる人物の悪口を書いてあるメールの送信画面だった
「何…こんなの出した覚えない…いや、それ以前に…なんで…私のパソコンにこんなものが…」
「どういうことだよ…!俺の事書いてあるじゃねえか!」
「私の事も書いてある!酷いわ…!」
「風見君、どういう事なんだこれは!」
「あーあ!やっぱりね。裏ではこんな事やってたんだ!」
「思った通り!腹黒すぎて引くわあ…」
会議室は一気にざわつき、収拾がつかないくらい混乱している
「……私、知りません。やってません…!」
「嘘つかないで!じゃあなんでこれが貴方のパソコンから出てくるのよ!!」
「私…やってない!誰かが私を陥れる為にやったんです!」
「誰がそんな事するのよ!」
罵声と怒号が飛び交う会議室で、事態の鎮静を図る為課長と部長が立ち上がり声を上げる
「皆さん!とりあえず一旦落ち着いて下さい!今はまずプレゼンを進行しましょう!」
納得いかない人たちを強引に抑制し、課長達はプレゼンを続けさせようとした
そしてそれを妨げる様に、誰かが言葉を発した
「見てあれ。メールの送信先…月島さんになってる」
ーー事態を静観していた月島さんの顔色も一気に変わった
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