世界

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「大丈夫です!お二人には絶対に迷惑がかからない様にします!」 「それなら…まあ、ね?」 「うん…何したらいいの?」 顔を見合わせながら二人は私に尋ねる 「ーーいつでもいいので、定時後に課長と食事に行っていただけませんか?」 「ええ!課長と?!」 「課長とご飯って…相当苦痛ね…」 「すみません…そこは本当に申し訳ないんですが… 課長が居ないその隙に私が課長のパソコンのフォルダに侵入しますので」 「……ちょっと、それはやばいよ!」 「花井さんバレたら警察行きになるわよ!」 「…分かっています。だけどお二人に協力していただいてるのに私だけリスクを冒さないなんて真似出来ません」 「…花井さん」 「でも、そこまでしなくても…」 「大丈夫です。バレないように気を付けますし、他にも協力してくれる人がいますので」 「私達以外にもいるんだ。あの子も恨まれてんねえ」 「本当に大丈夫なの?」 念を押して尋ねる田宮さんに、私は強く頷き答える 「ーーー任せて下さい。必ず無事に成功させます」 ーーーーー 「課長!今日飲みに連れて行って下さいよー!」 「私も行きたいです!」 「…どうしたんですか突然」 「色々話聞いてくださいよ!溜まってるんですよ私達も!」 「そうそう!そういった部下の話を聞くのも課長の仕事じゃないですか!」 「は、はあ…まあいいですけど。じゃあ今日の仕事終わりにでも行きますか」 「お願いします!」 遠巻きに見ていると,どうやら二人は無事に課長を誘えたみたいだ 定時後になると課長を引き連れてオフィスを後にしていった よし、私もそろそろ動こうーー 皆それぞれに退社し,今オフィス内にいるのは私と佐伯さんだけだった 「佐伯さん。お願いしますね」 「わかった…」 佐伯さんにしては穏やかに返事をした 恐らくビビっているんだろう 彼は菜穂のデスクに座り、菜穂のパソコンを開いた 菜穂のIDとパスワードは、春宮さんが手に入れてくれた 多分、菜穂の企画書を見せてもらう際に手元を見て覚えたんだろう そして課長の方のIDとパスワードは私が同じ方法であらかじめ入手してある 私は佐伯さんが菜穂のパソコンを起動するのと同時に課長のパソコンを開き、共有フォルダを開いた それにしても…結構簡単に侵入出来ちゃうんだな もっと厳重にしとかなきゃダメなのになぁ 「佳純ちゃん、こっちはいけたぜ」 「ありがとうございます。じゃあ次…お願いします」 そう、彼が怖いのは菜穂のパソコンを開く事じゃない 本当に怖いのはその次 月島さんのパソコンを開く事だった 「…マジでやんの?」 「やりとりした履歴が残らないとダメですから」 「バレたらまじ死ぬかも俺…」 「大丈夫ですよ。月島さん優しいですから」 「…佳純ちゃんは知らないからだよ。あの人の怖さを」 「相当怖がりますね」 「そりゃ昔から知ってるからね」 「…何かされたんですか?」 「…いや、何かされたとかじゃないんだけど」 佐伯さんはボソボソと、か細くそう話した 何かされたわけじゃないんだ …なんだそりゃ
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