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「急な話ですが、佐伯が一身上の都合で辞めることになりました。本来なら引き継ぎなどもしてもらわなければならないんですが、補える部分は月島がカバーしてくれるので佐伯に関わる仕事はまず月島の指示を仰いで下さい」
「それに伴って、月島が担っている光和薬品とサンライズケアの案件はとりあえず私と本間で担当する事になったので、そちらの方は私か本間に聞いてください」
「…課長、佐伯君が辞めたのと昨日のプレゼンの件は関係あるんでしょうか?」
興味に駆られたのか、岡本さんが物怖じせず課長に尋ねた
課長は一つ溜息をつき、少し考え込んだ後話を切り出した
「…そうだな、先に話しておくか」
「昨日の件についてだが、月島と風見は一切身に覚えがなくあれは悪質な悪戯だと判明した。ここにいる者たちだけには言うが、それら全ては佐伯が自分がやったと昨日打ち明けてきた。恐らく良心の呵責に耐えかねたんだろう」
…違う。あいつがそんな殊勝な人間な筈ない
きっとそれをさせたのは…
「ここまで大事になった以上は責任をとらせなければいけないからな…やむを得ず今回のような結果に至ったわけだ」
「私から言えるのはこれくらいだ。みんなもこれ以上の詮索は控えて欲しい。この話はもうこれで終わりにしよう!」
そう言って課長は朝礼を終わらせ、私達は業務につく
「佐伯君がやったって本当かしらね?」
そう簡単に終わる筈もなく、仕事が始まった途端岡本さんは私に訊いてきた
「わかりませんが…ひょっとしたら…佐伯さんが菜穂を助ける為に嘘をついたのかもですね」
「…ええ!?佐伯君風見さんの事好きだったの?」
「そうなんですよ…私もよく相談受けてましたので」
「佐伯君カッコ良すぎじゃないのそんなの!それ知ったら風見さんも靡いちゃうかも知れないわね!」
「どうですかねえ。菜穂って結構面食いみたいですし」
「あら、じゃあ花井さんの好きな人もかっこいいの?」
「まあ、はい」
世界一です。ダントツで
「でもその彼は見る目ないわねー。花井さんの方がどう考えても良い子なのに…彼女を選んじゃうなんてね……」
まあ、私の彼なんですけどね。今はまた
「仕方ないです。私が菜穂に敵うところなんてなにひとつないですし」
「もっと自信持ちなさいよー。私が男だったら絶対花井さんを選ぶわよ!」
そんなわけない…男だったら誰でも菜穂を選ぶに決まってる
でもそんなことどうだっていい
たった一人…私を好きでいてくれる人がいれば
「花井」
…………来た
「おはようございます。月島さん」
神妙な面持ちで私のデスクまでやって来た月島さんはそう言った
「今日の昼…外で食おうぜ」
「…了解です」
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