降雪

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ーーーー 「やっぱり月島さんですよね?佐伯さんの件」 昼休み、お馴染みのカフェ サラダを頬張る月島さんに私は問い質した 「さあ、どうだろうな」 「佐伯さんだけが罰せられるなんておかしいですよ。どう考えても首謀者は私じゃないですか」 もうバレても関係ない 私は悪びれる様子もなく打ち明けた 「流石にやりすぎたな。今回のは」 「怒ってますか?」 「まさか俺にまで攻撃してくんのは予想外だったぜ」 「ええ。そうすれば迂闊に菜穂の事庇えないかと思いまして」 「んなことしても意味ねえぞ。俺は普通に風見と接するし、あいつが困ってたら助けるしよ」 「でも同じ立場に立たせることはできました。これから何かある度にそういう目で見られますよ」 「人の目なんざ気にならねえよ。どうせ好奇心でしかものを見れねえ奴ばっかりだからな…主体性のかけらもありゃしねえ」 「で、質問の答えだが…怒ってるのは俺を嵌めようとしたことじゃねえ」 「…じゃあ何ですか」 「佐伯と二人で俺を嵌めようとしたことだ」 「だから佐伯さんを脅してクビにさせたんですか?」 「俺はこれでもあいつのことは結構可愛がってたつもりだ。 それなのにこんな仕打ちを受けたんだーーー 正直はらわたが煮え繰り返りそうだったぜ」 その語気に思わず私の背筋がジワリと滲んだ 珍しく、ガラにもなく、本気でキレている月島さんを見たからだ いつも大声で怒鳴る月島さんは見てきたけど、こんなに静かに怒ったのを見たのは初めてかも知れない 「…私のことはどうしますか」 少し恐る恐る、尋ねてみた 「そうだなー。今回は何も言うつもりはねえな」 「そうですか…」 「ただ」 「はい」 「次に同じような事をしたら、いくらお前でも許さねえ。その時は…… お前の一番大事なもんを奪ってしまうかもしれねえ」 ……ゾッとした。それがどう言うことかといえば 暗に、翔介さんの事を指していると思ったから 「肝に銘じておきます」 「はあー。俺はお前が怖くて仕方がねえよ」 こっちのセリフですよそれは 「どこまでやるつもりなんだよ。そのうちどえらい目に遭うぜ」 「心配してくれてるんですか?」 「まあそれもある」 「私はもう、菜穂を傷つけることでしか自分を保てない」 「…それを翔介が望むと思うか?」 「意地悪ですね。月島さん」 「……俺しか止める人間がいないからな」 止まりませんよ私は 例え翔介さんに言われたとしてもね これはもう宿命なんです この闇の果てにしか私の望む未来はない だから今は   どこまでも突き進む それがどれだけ歪だとしても 愛という形を残し続ける限りーーー
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