降雪

9/17
前へ
/549ページ
次へ
ーーー翌日 ーーーー 食道から胃腸にかけて、鈍痛が響く 重い体を必死に奮い立たせ、私は鏡の前で自分に喝を入れる 「……絶対に泣かない」 鉛のように重い服に袖を通し、意を決して扉を開く 見上げた空は今日もまた日差しが強かった それだけでいくらか気持ちは救われる …コーヒーでも飲んで行こう 普段なら出社途中に寄り道なんて滅多にしないけど でも今日は特別。もう出来なくなるかも知れないしね 私はずっと気になっていたいつも賑わいを見せる小洒落たコーヒースタンドに立ち寄った 店内にはOLやサラリーマンが携帯と睨めっこしながら順番を待っている 「うわ…」 結構多いな… 一瞬やめようか悩んだけど、遅刻してもいいくらいの気持ちだったので並ぶ事にした ーーー待つ事十数分、ようやくレジ前へと差し掛かる 「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりでしょうか?」 「えっ、と…ホットコーヒーのS下さい」 「ブレンドでよろしいでしょうか?」 「あ、はい!それでお願いします!」 種類がいっぱいあってわからなかったので適当に返事をする 「お会計450円になります」 店員さんの素早い返答に、私は慌て気味に財布からお金を出そうとした 「あっ!!」 その瞬間、財布からバラバラと小銭が地面に散らばってしまう …最悪 普段ならこんなヘマ滅多にしないのに… あたふたしながら小銭を拾う私に、後ろの人達は不機嫌そうにしている 「おいもうこの人後回しでいいだろ!!先にしてくれよ!時間無いんだよ!」 すぐ後ろのサラリーマンが私を指差し店員さんに叫んだ 普段なら間髪入れずに言い返すけど 今日はそんな元気もなかった 「すみません、私後回しで大丈夫です」 男性の視線に耐えられなかった私は小銭を拾いながら列を離れようとした その時だったーーー 「…450円ですよね?」
/549ページ

最初のコメントを投稿しよう!

215人が本棚に入れています
本棚に追加