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「そう…仕方ないわね」
「ありがとう、そこまで私の事考えてくれて」
「違うの…」
「…違うって何が?」
春宮さんの表情がキッと切り替わる
真剣な目つきで彼女は話し始めた
「…貴方にだけ本当の事を話すわ。菜穂さん」
「本当の事…?」
「ええ。実は私がこの会社に来たのは、花井さんに復讐する為だったの」
えっ!??
「…嘘だよね?」
「本当よ」
そんな…復讐の為にわざわざ会社まで来るって…それもどうかしてるんじゃ…
「軽蔑したよね…」
「いや…軽蔑はしてないけど、驚いたな」
「花井さんとは、鳥谷さんと同じ親睦会で知り合いちょくちょくお付き合いさせていただいてたの。最初は優しく接してくれて私達は仲良くなれたわ
だけど、私が鳥谷さんに好意を寄せていると知った花井さんは、執拗に私に嫌がらせをするようになったのよ…」
私だけじゃなかったんだ…他の人にもこんな事を…
「以前行った開発展では、いきなり頭から化粧水を掛けられたわ…月島さんもその場にいたから知ってると思う」
「開発展でそんな事が…」
佳純は何も言ってなかった。無事に終わったとしか訊いてない…
…どこまで歪んでしまえば気が済むの…佳純
その瞬間、考え込む私の腕を春宮さんが掴んだ
「菜穂さんごめんなさい!さっきは貴方の為みたいに言ったけれど…本当は私の為だったの!!一度でいいから彼女に…人の痛みを思い知らせたいの!じゃないと私…悔しくて…!」
春宮さんは涙を流しながら私に訴える
「………」
ーーー佳純、貴方は間違ってる
…誰彼構わず傷付けて
それで自分の心を満たすなんて
そんな人間のする恋なんて、成り立っていい筈がない
「わかった。協力するよ春宮さん」
辞めるのは少し先延ばしにする
佳純…今度は貴方が思い知るべきだ
人の痛みを 苦しみを
その身を以ってーーー
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