降雪

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業務が始まり出し女性社員達は機先を制すべくチラチラと彼の様子を気にしているようだった そして休憩時間になった瞬間 「雪村君は煙草とか吸うのー?」 「喫煙所の場所わからないなら教えるよー?」 「いえ…僕は煙草は吸いませんので…」 「えー!珍しいー!でもいいよね煙草吸わない男性って!」 「わかる!ニコチン切れでイライラされたらこっちもたまんないしね!」 「分からない事あったら何でも訊いてよ?あ、私小原遥子っていうの!」 「陣内紗希です!よろしくね!」 小原さんと陣内さんは雪村さんに自分を売り込んでいた あまり絡んだことはない二人だけど、よく男性社員に話しかけているのを目にする 二人とも私より4つほど年上だけど格好は私よりも若い 「おいおいお前らいきなり雪村にツバつけようとしてんな?グイグイいく女は引かれるぞー」 「ハア!?そんなんじゃないし!ただ私らは早く雪村君が馴染めたらいいなって思ってるだけだもんね!」 「そうですよー!変な事言わないで下さいよ!」 「気を付けろよ雪村!この子ら男日照りだから!」 「サイテー!」 「まじありえないよねー?」 何その会話… あんたら高校生か… 若すぎるノリに雪村さんも若干引いてる感じだった 苦笑いしてるってことは…困ってるんだよね…? 気がつくと、私は何の気無しにフラフラと雪村さんの方へと歩み寄っていた 「…あの、今朝はありがとうございました」 無視するのも忍びないし彼には借りがある 私は三人の会話に割って入った 「…あっ。朝の」 雪村さん以外の三人は冷ややかな視線を送ってくる 「驚きましたね。同じ会社だったなんて」 「はい!こんな偶然ってあるんですね!」 「何?知り合いー?」 「何かあったの?」 小原さん達が強引に会話に入り込んでくる 「朝偶然助けてもらっちゃって…」 「助けたってほどの事じゃないですよ!」 「いえ!本当に嬉しかったので!」 私が笑顔で答えると、彼も笑顔で返してくれた だけどそれをよく思わなかったのか 明らかに不機嫌な表情で小原さん達は私を見ていた 「へえ。そうなんだ」 「嬉しそうだね風見さん」 「いえ…そんな事は…」 しまった。やらかしちゃったかな もしかしたら変に敵愾心を煽ってしまっていたかもしれない 「だけどさ、風見さん一昨日あんな事あったんだからさ。ちょっと自重した方がいいんじゃない?」 「…はい?」 どういう意味よそれ… 「あんな事?」 雪村さんが質問する 「うん、一昨日プレゼンがあったんだけどね!なんかそこで風見さん嫌がらせされちゃってて」 「小原さん!やめて下さい!」 何で来たばかりの雪村さんにそんなこと言うのよ 「この子可愛いから男絡みで恨まれやすいみたいなの」 やめて! そんなこと…知られたくない…! 「でも実際月島君とはどうなの?付き合ってるのー?」 「付き合ってません」 「おいやめとけよお前ら。風見困ってんだろー」 「えーだって気になるじゃないですか!よく二人で食事も行ってるみたいだし」 「月島さんはよくしてくれる先輩です。それ以上の関係じゃありません」 「えーただの先輩と頻繁に食事行くう?」 「私だったら行かなーい。めんどいし!」 「絶対向こうは気があるよね!?」 「やっぱり風見さんって罪作りー」 この人達…性格悪いなあ いや… この会社に性格のいい女性なんて…いないのかも 皆こんなもんなんだ。人を妬んで自分勝手に攻撃して 平気で他人を蹴落とすことが出来る ただ私が弱かっただけ。他人を蹴落とす勇気が無かっただけなんだ いいよ。そっちがその気なら私だってーー 「あの、ちょっといいですか」
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