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会話に割り込んで来たのは、雪村さんだった
「…どうしたの?雪村君」
「今って休憩中なんですよね?」
「え…うん。まあ」
何を当たり前のことを、といった顔で皆見ている
「それじゃあ今は自由な時間なんですよね」
「まあ、そだね」
「じゃあ移動してもいいですか?」
「え?どこ行くの?」
「トイレ?」
「いえ、空気が悪いので…いい空気を吸いに行こうかと」
「……え??」
その一言で、一瞬にして場が凍った
「嫌いなんですよね、僕。こういうイジメみたいなの」
一番驚いているのは、多分私だ……
「イジメだなんて…別にそんなんじゃないよ。ねー?」
「そ、そうそう。ただの冗談だよ!別に悪気があって言ったわけじゃーー」
「悪気があろうとなかろうと、本人が傷付いたならそれはイジメです。貴方方は良い歳してそんな事も分からないんですか?彼女の顔を見て傷付いているかどうかも分からないんですか?」
「な、何なのいきなり…何でそこまで言われなきゃダメなの!」
「そこまで言われなきゃ分からない馬鹿だと思ったからです」
「なっ!?何コイツ!まじふざけんなし!」
「ちょっと歳上に向かって礼儀知らず過ぎない?!」
「おい…雪村どうした…?とにかく謝っとけって…怒らすとこええぞ女は」
「フッ」
「この際だから、はっきり言っておきます」
彼はそう言うと立ち上がり、オフィス内の全員に聞こえるくらい大きな声で言い放つ
「皆さんいいですか
この先風見さんを傷付けるような人間がいたら、僕はそいつを絶対に許しません
彼女が与えられた苦痛を数倍にしてそいつに返しますので」
「ーー覚えておいて下さいね」
その場にいる者は
只々唖然としていた
まさか…彼のような大人しそうな人が転属初日にそんなことを言うなんて誰も想像していなかっただろう
だけどその強い眼差しに
誰も言葉を紡ぐことが出来なかった
そして
彼は何故か
真っ直ぐに、佳純の方を見ていた
同じように佳純もまた彼を見ている
まるで……これまでの事を全部知っていたかのように
でも…
「どうして?」
私は純粋に疑問だった
今日初めて出会っただけの私を
どうして彼は護ろうとしてくれてるのか
不思議で仕方なかった
「漸く貴方に…ーー」
「え?」
なんて言ったのかよく聞こえなかった
すると彼は優しく笑い
「もう大丈夫です」と耳元で囁いた
その笑顔はまるで
ふわりと降る雪のように
私の心に温もりをもたらしたーー
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