黒に染まる

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黒に染まる

ーーー 気に入らないーー デスクに向かう私の頭の中には、仕事の事などこれっぽっちも無かった 頭にあるのは、さっきのあの眼つき 新しくやってきた雪村とかいう男のことだけだった 何故かあの男は菜穂を守ろうとしている そして何故か、私が菜穂にしている事を知っているようだった いや…あの眼は 確実に知っている… 知ってて私に宣戦布告してきたんだ 絶対許さない 月島さんならともかく 新入りの貴方なんかに守れるわけがないでしょ まあ… 駒を一つ失ってしまったのは残念だったけど… 春宮さんがいなくなるまではまだ利用させてもらうし 今は新しく私のために動いてくれる人も増えたしね 「お疲れ様です!」 休憩時間になると私は休憩室に行き、煙草を吸いながら談話している田宮さんと横峯さんの元に行った 「あ、花井さん!びっくりしたね。普通に来るんだもん」 菜穂の事を言っているんだとすぐに察した 「びっくりしましたね…まあでももっと驚いたのは、まさか開発部の人を既に味方にしてたことですけど」 「そうそうそれ!ほんとびっくりしたわよ!なんで開発部の子なんかと知り合いなのあいつ」 「カッコいい子だったしツバつけといたんじゃないの?強かだわー」 「でもあの人あんなこと言ってましたが、どうします?」 私は田宮さんを煽るような口振りで尋ねた 年下の奴にあんな生意気なこと言われてムカついたでしょ? 出る杭は早急に叩き潰さないとね 「うーん。もういいんじゃないかな」 「えっ?」 嘘でしょ… 「今回結構大事になってビビっちゃった。あの雪村君て子かなり賢そうだしね。下手に嫌がらせしてバレたら今度はこっちが危ないよ…」 「杏里の言うとおりだと思う。花井さんももうやめとくべきだと思うな」 この二人…何尻込みしてんの!? 貴方達がヤル気を出してくれないと困るのよ 「そうですよね……でも」 私が言葉に余韻を残すと、二人はそれに食いついてくる 「…どうしたの?」 「実は菜穂…朝出社した時言ってたんです。どうせ犯人は田宮さんで、田宮さんが佐伯さんに色仕掛けでもして頼んだんじゃないかって言ってました」 「はあ?あいつ頭おかしいんじゃないの」 「それでバレそうになったから佐伯さんに罪を全部擦りつけて切り捨てたって…」 「あいつっ…!」 「私ーーー 悔しいんです!田宮さんがそんなこと言われっぱなしなのは我慢出来ないんです!!」 「花井さん…」 「わかった。花井さんが何するにしても手を貸すわ。できることがあるなら言って」 「でも危ない頼み事は勘弁してね。ちょっともう今回ので懲りたから」 「はい!勿論です!」 良かった。一先ずは安心か 雪村晴希…… 守れるものなら守ってみろ 自分の無力感を味わいながら菜穂が傷付いていくのを近くで見続けていればいいんだーー
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