黒に染まる

3/14
前へ
/549ページ
次へ
「聞いて欲しいんだ。佳純に」 「…何を?」 「実はこないだ、風見が僕に会いにきたんだ」 「…え?」 …まさか…? いや…そんな… そんな筈…ない… 「……僕が風見のストーカーだってバレてたよ」 「「カシャーン!!」」 思わず、持っていたフォークを床に落としてしまった 手の震えが止まらない やっぱり菜穂は 翔介さんに言いに行ったんだ… 翔介さんは…私がバラしたと知ってる? でもだとしたら… どうして… 「やっぱり、佳純が言ったんだね?」 「………」 言葉が出てこない 「…ご、ごめんなさい」 掠れた声でようやく絞り出せたのはその一言だけだった 「……違うんだ」 「え?」 唇を震わせる私の手を握り、翔介さんが答えた 「勘違いしないで欲しいんだ。僕は佳純に対して一切怒っていないよ」 「怒って…ないの?」 「それどころか、逆に感謝してるんだよ。佳純のお陰で僕は…漸く前へ進み出せたから」 「どういう事…?」 「佳純のお陰で この歪んだ想いに決着を着けることができた」 それってつまり もう菜穂のストーカーはしないって事? 菜穂への想いはーー 私の視線から思惑を読み取ったのか 翔介さんは笑って答えた 「もう風見には会わない。佳純のお陰で、やっと全てを断ち切れたよ ありがとうーー」 「ーー…嘘」 「本当だよ。今僕の頭の中にいるのは、佳純だけだよ」 「信じてくれる?」 止めどなく頬を伝う雫が 心の膿を吐き出してゆく もしかして…抜け出せるかも知れない やっとこの暗い闇から 妄執に取り憑かれた自分から 解き放たれるかも知れないーー 「だから今もう一つ言わせて」 涙と鼻水でくしゃくしゃな私の顔を真っ直ぐに見つめながら翔介さんは続けた 「僕とーーー結婚してほしい」
/549ページ

最初のコメントを投稿しよう!

215人が本棚に入れています
本棚に追加