黒に染まる

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ーーー聞き間違いじゃないだろうか… 今…翔介さん 結婚…って言った?? 「私…もしかしたら聞き間違えたかも。今翔介さんが結婚って…」 「聞き間違いじゃない。そう言ったよ」 じゃあこれは夢? 夢なら一生醒めないで欲しい 「本当…に?」 「うん。でも、少し先の話になるけど」 「嬉しい……私なんかでいいの?」 「もう佳純としか考えられない」 信じてもいいの? もう不安な夜を迎えなくてもいいの…? 「幸せにしてみせるよ…」 「わかった。私…待ってるね」 淀みが消えていく 濁った水が透き通るように 私の中の汚れが 削ぎ落とされてゆく 「…愛してる」 「…僕も」 私が翔介さんの腕の中に飛び込むと、翔介さんの唇が私の唇に触れる それさえあれば指輪も何もいらなかった 約束を交わすみたいに、何度も何度も口付けを交わす ただそれだけで、確かなものを感じられる 高まる熱が勢いを増してゆく そうして私達は熱い一夜を過ごしていった その時、翔介さんの携帯が鳴っていた事なんて 気付くわけもなくーーー ーーーー 呼び出し音が鳴り出してすぐに、電話口から声が響いた 「…どうしたの?」 「翔介に電話したんだが出なくてな」 「…寝てるんじゃないの?」 「そっちはまだ20時くらいだろう?」 「まあそうだけど、どうしたの?」 「ああ。来週月曜日に帰国する事になった」 「……そうなんだ。分かった」 「……恐らく思っている以上に時間が無い。お前も覚悟はしておけ」 「…うん」 「後、俺からも話すが翔介に会ったら伝えておけ。お前の我が儘ももう終わりだとな」 「…言っておくよ」 「もう一つ…以前推してあった件は進んでいるか?」 「…あー、まあいい感じに進んでると思うよ」 「…ならいいが。くれぐれも悪い虫が寄ってこない様お前に任せたぞ」 「悪い虫か。それってあの人の事だよね?」 「そうだ。あの見るからに愚鈍で間抜けで頭の悪そうな女だ」 「そこまで言うの…。まあちゃんと見張っとくから任せておいてよ」 「ああ、頼んだ。また連絡する」 ーーー……翔介。お前がどれだけ足掻こうが 鳥谷家の宿命からは逃れられん その宿命の障害になる物は俺が排除してやらなければならない どんな手を使ってもなーーー
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