黒に染まる

5/14
前へ
/549ページ
次へ
ーーー 「う…うん…っ」 目を開けると、私は一番最愛の人の腕の中にいた このままベッドから出たくない 寝ている翔介さんの睫毛の長さに見惚れながら、もう一度昨夜の情愛を沸々と思い返す ーーー僕と結婚してほしい ……ーー未だに信じられないや 結婚…何ていい響きなの 幸せだなあ 「…おはよう。佳純」 「あっ!起こしちゃった!?ごめん」 気がつくと翔介さんは私の顔を見て微笑んでいた 「偶然だよ。朝ご飯作るね」 翔介さんはスッと起き上がり、私の頭を撫でてくれた 寝起きいいなあ。私まだボーッとしてる… 「佳純は支度してて。僕まだ時間に余裕あるから」 優しすぎるよ翔介さん 「じゃあお言葉に甘えます…ごめんね」 本当に甘えてばっかりだ こんなんじゃ嫁として失格だよね 顔を洗い着替えと化粧を大急ぎで済ませ、少しでも手伝えるようにリビングへと駆け込む だけど翔介さんの手際が良すぎるせいか、朝食はほぼ全て出来上がっていた 「ごめんね何もかも!」 「いやいや、こちらこそ簡単でごめん」 バターロール、サラダ、ハムエッグとヨーグルト 十分過ぎるよ… 「全然だよ!明日は私作るからね!」 「無理はしないでね。コーヒー?紅茶?」 「あ!コーヒーでお願いします…」 申し訳ないけど今日だけは甘えきらせてもらおう 「いただきます!」 大好きな人とこんな優雅な朝を過ごせるなんて、これほどの贅沢があっていいのだろうか これが毎日になると思うと、口元が緩んで仕方ない 「今日も早く帰って来るね!」 「うん。今日は何が食べたい?」 「今日は私が作るよ!逆に何が食べたい?」 「いいの?疲れない?」 翔介さんの為なら何をしても疲れるわけがないよ 「大丈夫だよ!今日も定時だし!」 「ありがとう。じゃあ和食がいいな」 「分かった!何か考えておくね」 「お願いします」 「いえいえ、ごちそうさまでした」 二人分の洗い物を済ませ時計を見ると、遂に至福のひとときを終えることを余儀なくされる時間になっていた 「じゃあ…行ってくるね」 「行ってらっしゃい。気を付けてね」 「うん!翔介さんも気を付けてね!」 私は少し恥ずかしいけど、翔介さんに行ってきますのキスをした 「愛してる」 「僕もだよ」 名残惜しさに満ち満ちながら、私は玄関のドアをゆっくり開き部屋を後にした
/549ページ

最初のコメントを投稿しよう!

215人が本棚に入れています
本棚に追加