黒に染まる

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ーーー 昼休みが終わり、チャイムと共にそれぞれデスクに着き業務を再開し始める かくいう私は仕事どころではなく、頻りに菜穂の方をチラチラと見続けていた …菜穂が鍵付きの引き出しの中に大事な書類を入れるのは前から知っている つまり、絶対に仕事中にその引き出しを開けようとする筈 じろじろと視線を送り続けていると、菜穂がデスクの引き出しの中を確認していた 恐らく鍵を探してるんだろう 鍵は私のポケットの中なんだけど ーー私が菜穂の方に目を向けていると、菜穂の元に雪村が歩み寄って行った よく聞こえないけど二人は何か話をしている 「え!!すみません!!」 オフィス内に大きな声が響く 声を張り上げたのは菜穂だった 「どうした?」 今度は課長が菜穂の方へ歩み寄って行った 菜穂と雪村と課長は神妙な顔付きで話をしている …まさか私が鍵を盗ったことを雪村に話した? でも無駄だよ これは更衣室に落ちてたんだからね そろそろ大事になったら困るし、返しに行こう 私は菜穂の元へと近付き、尋ねる 「菜穂、これ更衣室に落ちてたんだけど菜穂のじゃない?」 「え?」 菜穂は驚いた表情で私を見ている フフ、私が盗ったって思ってるんだろうけどどこにも証拠なんて無い 何言ったって無駄ーー 「何でその鍵が更衣室に?」 「…え?」 そう言ったのは、菜穂ではなく隣にいた雪村だった 「…何でって、普通に菜穂のロッカーの前に落ちてましたけど…どうかしました?」 「いやこれ、僕のデスクの鍵なんだけど」 「………は??」 意味がわからない 何でコイツのデスクの鍵を菜穂の引き出しに入れてるの? まさか、菜穂が盗んだ? 「本当に雪村の鍵なのか?」 「はい。見て貰えばわかります」 「それが何故更衣室なんかに?」 「実は…昨日から誰かに盗まれてたんですが事を荒げたくなくて黙っていました。すみません」 どういうこと?そうなると、菜穂がコイツから盗んだって事じゃない…? 「まさか花井さんが持ってたなんてね」 「いや、私は更衣室で見つけただけなんですけど」 なんだか嫌な流れになってきた気がする
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