黒に染まる

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「私知りませんよ。そんな鍵」 菜穂はキッパリとそう言い放った 「いやでもこれは菜穂のロッカーの前に…」 「そんなに言うなら警察でも呼んで指紋採取してもらえばいいんじゃない?私そんな鍵触ってすらないし」 「オイオイ警察って…本気か風見」 「課長、花井さんはきっと私のせいにしようとしてこのタイミングで鍵を持って来たんです」 「えっ?」 菜穂は何を言っているのか この鍵は誰のデスクに入ってたと思ってるのよ! 「私ずっと花井さんに嫌がらせされていたんです。今だから言いますが、こないだのプレゼンの件も多分花井さんが関係しています」 「花井…何でそんな真似を…!本当なのか!?」 ーー間違いない 菜穂のこの射抜くような好戦的な眼… 菜穂は 私を嵌めようとしている 遂に復讐に出たってわけか 一人味方が出来たからって…調子に乗ってるね 「花井さん、鍵も貴方が盗ったんですね。風見さんに濡れ衣を着せるために」 「私知りません!鍵の事もプレゼンの事も!何で私がそんな真似しなくちゃならないんですか」 「何でって、それはこっちが訊きたいですよ。まあでもこうやって言い争っていても時間の無駄ですし…」 「課長に聞いていただきたいものがあるのですが、良いですか?」 「ああ…構わないが…」 そう言いながら雪村は懐からボイスレコーダーのような物を出した 「…何ですかそれ」 「その前に、田宮さんも呼んでもらって良いですか?」 「…何で田宮を?」 コイツ… まさか… 私の脳裏に一つの直感が働いた マズい…!! 課長は雪村に言われるがまま田宮さんを呼び付ける 「ど、どうしたんですか?何かありました?」 「いや、俺にもさっぱり分からないんだが…雪村が田宮を呼べと」 「雪村君?一体何なの?私今忙しいんだけど…」 「すぐに済みます」 スイッチを押すと、ボイスレコーダーから声が流れ出す ーー『今回結構大事になってビビっちゃったし、あの雪村君て子もかなり賢そうだしね。下手に嫌がらせしてバレたら今度はこっちが危ないよ…』 『杏里の言うとおりだと思う。花井さんももうやめとくべきだと思うな』ーーー それは、私と田宮さん達が休憩室で交わした会話だった
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