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燃ゆる悪
ーーー
「もう一度確認するが…花井があのメールを捏造したと言うことでいいんだな?」
定時後、会議室に呼び出された私は課長にそう問い質された
隣では神妙な顔付きで部長も座し話を聞いている
「…知りません」
「知りませんは通らないぞ…三人もの人間が花井の仕業だと言ってるんだ。例え花井がやったんじゃないとしても何かしらの関与はしてる筈だ
ここまで来たら知らぬ存ぜぬじゃ通らんぞ!ありのままにきちんと全部話せ」
「…嵌められたんですよ私は、あの三人に」
「じゃあボイスレコーダーの方はどうなる?あれはどう説明する?」
「たしかに嫌がらせは多少しました。でもそれは可愛いものですよ。物を隠したり、陰口を叩いたり無視したりしただけです」
「録音された内容で危ない事と言っていただろう。あれは俺のパソコンに勝手にアクセスした事じゃないのか」
「…何かそんな証拠でもあるんですか?」
「あのね花井さん。君ね、自分の立場分かってる?こっちとしてもそういう危険人物はなるべく会社にいて欲しくないんだ…つまり次第によっちゃ君はクビになるかも知れないんだよ。言葉には気をつけなさい」
憤る課長の横から部長もそう口を挟んできた
…正直、こんな会社に未練はない
けど
私にはやらなくちゃいけないことがあるーー
だから今クビになるのは避けたい
少なくとも、結婚するまではーー
「…すみません。でも私、本当にその件は知らないんです…何もやってません」
「花井…俺もそこまで馬鹿じゃない。薄々は察しているんだ」
「…何をですか?」
「横峯と田宮に誘われて飲みに行った日…さっきあの日の残業の記録を見返してみたら、残っていたのは花井と佐伯だけだった。
恐らく俺のパソコンにアクセスしたのはあの日なんだろう
上手く痕跡は残さないようにしてたみたいだが、俺はほぼ間違いないと断定している
もうここまで来たら全て調べればわかる事だ。だけど俺は花井自身の口から真実を訊きたいんだ
分かってくれるな?」
どうせ話したってクビになるだけなのに話すわけがない
それなら最後まで醜く足掻き続けてやる
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