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「…実はあの残業の日、佐伯さんが課長のパソコンを弄っているのを見ました。今思えばあの日に捏造していたんですね」
あくまでやったのは佐伯さんだ
今更どっちがやったかなんてわかるわけない
「ハァーッ…」
課長はやれやれといった様子で首を垂れて溜息を吐いた
「あくまでやったのは佐伯だと言うんだな?」
「…はい」
「電話して佐伯にももう一度話を訊くぞ?」
「…構いません」
多分だけど、佐伯さんは月島さんに口止めされ脅されてる筈
かなり月島さんにはビビっていたし簡単に口を割ったりはしないだろう
「今回の件は他部署まで巻き込んであるかなり悪質なイジメだ。
我々としても、会社の秩序の為にも看過できないんだよ
私個人の意見としては警察の介入も必要だと見ているが」
「私は関係ないので…ちなみに風見さんの物を少し隠したりしただけでクビになったりはしませんよね?」
「それは分からんよ」
「そもそも何故そんな事をするんだ。風見が花井に何かしたのか?!」
「…そうですね、とても深い傷を負わされましたよ。心に」
「…一体何を?」
「それはプライベートな事なので控えさせてもらいます」
「あのなーー」
「有坂君、もういいじゃないか。彼女が警察を呼ばれてもいいと言ってるんだしそうしよう
だけど花井さん…覚えておくといい。もし風見さんが被害届を提出し、君がやった事が明るみに出れば、君はクビどころでは済まないかも知れない」
「その覚悟があるのならば、君はもう何も話さなくていい」
何これ脅迫じゃん。これこそ逆に脅迫罪に問われるんじゃないの
労基に訴えてやろうか
「失礼します」
「…!!」
突然誰かが会議室に入ってきた
「…月島。どうしたんだ?」
「今大事な話をしてるんだが」
振り返ると、立っていたのは月島さんだった
「それについて、僕から少し打ち明けとかなければいけない事があります」
「…何だ?」
「実は…ーー
花井は、佐伯にある弱みを握られ脅されていたんです」
「え!?」
「どういうことだ?」
一転して、課長と部長の態度が急変する
私自身驚いているんだから無理もない
…まあ、動画撮って弱みを握ってたのは私なんだけどね
「実は佐伯の奴は花井の盗撮画像を持っていまして、それを利用して花井を脅していたんです。今回の件も、実は佐伯が画策した事で花井は無理矢理協力させられていたんです」
「何だと!?」
「…そうなのか?花井。さっきはそんな事全然言わなかったが」
流石月島さん。全く出鱈目な作り話だ
「実は…そうなんです…だけど怖くて言えませんでした」
「本当…なのか?」
「佐伯本人が言っていたので間違いないと思います」
「一体どういう事なんだ」
「…そうなるとまた話が変わってくるな」
「やはり一度佐伯に話を訊くべきか」
「それは勘弁してやってください。もし花井がバラしたと知ったら、佐伯はなりふり構わずその画像をネットに晒すと思います…
幸い今回あいつには二度と花井に関わらないと誓約書を書かせましたので、こちらから事を荒立てない限りは向こうが下手な真似に出ることはない筈です」
「…しかし」
「花井の名誉のためにも、どうかこれ以上の追及をやめてあげてもらえませんか?」
「…うーん」
深々と頭を下げる月島さんに、課長は困り果てた表情で唸った
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