燃ゆる悪

3/19
前へ
/549ページ
次へ
「分かった…そういうことなら佐伯への追及は控える。だが、イジメに加担していたのは事実だ」 「はい。花井、それについてはお前も処罰されても仕方ないぞ?」 「…反省しています。すみませんでした」 真剣に語る月島さんに合わせて、私はしおらしく頭を下げた 「…どうしますか?部長」 「うーむ。とりあえずまだ処罰の方は上とも話し合いが必要だな…」 「そうですね…花井、処分は追って伝える。とりあえず明日は普通に出社しなさい。それから、風見への接触は当面禁止だ」 「…分かりました。ありがとうございます!」 私はやりすぎなくらい深くお辞儀し、会議室から退室した 「…月島さん。すみませんでした」 「間一髪だったじゃねえか。ったく、馬鹿な真似するからだ」 「でも助けてくれるんですね…」 「…まあなあ、助けるしかねえじゃねえか。お前がいなくなったら困るしよ」 「別に困りませんよ。私一人いなくなったくらいで」 「会社の話じゃねえ」 「え…」 「俺が困るんだよ。お前がいないと」 「…すみません」 でも私は… 「分かってるよ。分かってっけど…簡単に割り切れるもんじゃねえんだよ」 俯いてそう答える月島さんに、私は何も言えなかった 何度も何度も、この人は私を救ってくれる 私はそんな貴方の気持ちを裏切って踏み躙ったのに それでも貴方は私を助けてくれるんだ どうしてそこまで優しいの… 帰り自宅を済ませ、エレベーターに乗り込む と月島さんが私に尋ねてきた 「今日も翔介んちに行くのか?」 「…そうですね」 「ふーん、仲が良くて何よりだな!」 月島さんはぶっきらぼうに振る舞い、私の頭をわしゃわしゃと撫でてきた 「ちょ、ちょっと月島さん! 何するんですーー」 その瞬間 私の身体は月島さんに包まれていた 「月島さん…!?」 その想いを伝えるように、月島さんは痛いほどに強く抱き締めてくる それはとても振り解けない 紛れも無い、男の人の力だった 「…割り切れるわけ…ねえだろ」 か細くそう呟いて、月島さんは更に強く私を抱き寄せた 「…ごめんなさい…」 どれだけ想われても 私にはそれしか言えない 私の心も身体ももう全部翔介さんのものだから それ以外の世界は、どこにもないの
/549ページ

最初のコメントを投稿しよう!

215人が本棚に入れています
本棚に追加