燃ゆる悪

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「久しぶり。何の用?」 「…フッ、空港から急いで顔を見に来た兄にいう台詞か?」 「うちに来るより先に家に帰るべきだろ」 「わかっている。すぐに帰るつもりだ」 「それより…」 お兄さんは私の方をチラリと一瞥し、すぐに視線を戻した 「何故彼女が?」 「…何故って、彼女だからだよ。知ってるだろ」 「…春宮さんはどうしたんだ?」 「…どうもしないよ。何でも自分の思惑通りに事が運ぶと思うな」 「フフ、偉そうに言い返すようになったな。分かっているのか?今がどういう状況か」 え…?何かあったの? 「…分かってるよ。だから今日は兄さんに言っておこうと思って」 「……?」 「僕達結婚する事になったから」 「何だと?」 お兄さんの顔が途端に険しくなる 威圧的な眼光で翔介さんを睨みつけるが、翔介さんも負けじと睨み返す 「ウェルズを継ぐ事には納得した。だけど、生涯を共にする人は自分で選ぶ。人に選ばれた恋人なんてまっぴらゴメンだ」 「翔介さん…ウェルズって…会社を…」 継ぐ…?? 全然何も訊いてないんだけど… 「黙っててゴメン。言おうと思ってたんだけど」 「ど、どうして急に継ぐ気になったの??」 だってーーあんなに嫌がってたのに あっ! そういえば前に麟君が言っていた… 翔介さんは自分の父親を裏切る事は出来ないって… ということは、お父さんに頼まれたの? じゃあ、麟君はどうなるんだろう…? 「何だ翔介。まだそこすら話していなかったのか…大した恋仲だな」 「…とにかく、そういう事だから。もう勝手に人の恋人を決めるような真似はやめてくれ」 「お前はまだ何にも分かっていないな、経営というものを。言っておくがお前のままごとに付き合っていたら、ウェルズの社員は全員路頭に迷うぞ」 「会社の経営と僕の恋愛事情に何の関係があるんだよ。政略結婚とか今時ありえない」 「ありえない…か だから子供なんだお前は 一流の企業には一流たる系譜がある。普通の中小企業ならば、愛だの恋だの好きにすればいい。だがそれは許されないんだ、俺達には二万人の社員の人生を背負う義務がある。その重みすら知らんガキが好き放題ぬかすな」 …この威圧感 流石は暴君…いや、魔王だ… お兄さんが言葉を発する度に翔介さんも段々と勢いを失っているのがわかる…
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