燃ゆる悪

10/19
前へ
/549ページ
次へ
ーーー 翌朝ーーー 「それじゃ、行ってくるね」 「うん、行ってらっしゃい。また夜ね」 私は、昨日と同じように少し照れながら翔介さんに行ってきますのキスをした 「…慣れないね」 「…だね」 二人とも照れ笑いし、恥ずかしくなった私はそそくさと部屋を出た この部屋を出るのはいつも憂鬱だ まるで夢から醒めるような…そんな感じだ それにしても 結局…昨日は全然寝れなかったな お兄さんの事で打開策を練っては見たけど、どうしてもあのお兄さんに一泡吹かせるなんて不可能だ… 相手は魔王だ。半端な策じゃ意にも介さない せめて何か弱みを握れたらなあ でも…あの人に弱みなんてあるのかな そんな事を考えながらでも、足は着々と仕事へ向かう 昨日あんな事あったから余計に仕事行きたくないなあ でもここで休んだら負けた事になる 菜穂はいじめられてても来てたんだ 私が休むわけにはいかない ……ああそうか 菜穂も朝こんな気持ちだったんだな だけど菜穂にはあの男が味方についた 雪村…あいつだけは何としても仕返ししないと気が済まない あいつのせいで私がこんな目に遭ったんだから だけどあいつは何で私が菜穂に嫌がらせしてたのを知ってたんだ それにどうして菜穂を守ろうとするのか …あいつの顔どこがで見た気がするんだけどなあ ーー考え事をしていると、私の前を田宮さんが歩いていた 田宮さん…昨日は私をあっさり見捨てたけど まだ何か利用価値はあるかもしれないし…腹立つけど、許してあげよう 「田宮さん!!おはようございます」 私は背後から笑顔でそう言った 「……おはよ」 小さな声でそう呟き、田宮さんはスッと私から離れて行った ………は?? 何その態度… 怒るのは私の方なんだけど 気まずいにしても、せめて一言くらい謝るべきでしょ。あんな嘘ついて裏切ったんだから… もしかしたらもう田宮さんは使えないかもな…
/549ページ

最初のコメントを投稿しよう!

215人が本棚に入れています
本棚に追加