燃ゆる悪

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「…ど…何ですか味方って。そもそも私は誰かを味方につけた覚えはありませんけど」 「そうなんですか?私は味方だと思っていましたよ。貴方は体よく私を利用してくれていましたもの」 「…貴方みたいな人を味方だと思うわけないじゃないですか。すぐに人を裏切りそうな顔してるのに」 「フフ、否定はしませんよ。ですが私も裏切ったわけではありません…人としての道理を全うしただけです」 「よく言いますね。喜んで菜穂を陥れるのに加担してた人が」 「いいえ。私にはずっとこの光景が見えていました。貴方が孤立し、この場の全ての方達から冷ややかな目で見られるこの時が」 「…尊敬しますよ。その性格の悪さ」 「貴方も人の痛みを知るべきです」 悪寒が走るくらいの邪気を放ちながら、これ以上ないくらいに嫌らしく笑う 「痛みを感じた事もない人がよく言いますね」 この女を信じてたわけじゃないけど…裏切られたらそれはそれでムカつく 「花井さん!他人の事をとやかく言ってる場合じゃないでしょ!反省してるの?!」 横からお局の吉村さんが声を張り上げてきた 関係ない部外者が出しゃばってこないでほしい 「横峯さん達も加担してたんでしょ!良い歳して何やってんの!」 「いや私達は…花井さんの為に仕方なく…」 「うん…それに何かしたわけじゃないしね…」 この人ら本当保身しか考えてないんだな… 「ていうか吉村さんも風見さんの悪口言ってましたよね?それは良いんですか?」 「言ってましたね!嫌味ったらしく」 「そ、それは花井さんがそういう嘘をついたからでしょ!噂が立たなきゃ私だって何も言わなかったわよ!」 …この人ら… なんて見苦しいんだろう どいつもこいつも私のせいにして この職場にはクズしかいないのか 「とにかく!花井さん!貴方が一番悪いのよ!ちゃんと風見さんに謝りなさい!」 「そうね…花井さん。きちんと謝ったほうがいいわよ」 「おはようございます。どうかしたんですか?」 …菜穂 タイミングを見計らったように、背後から菜穂が声を掛けてきた 「あ、風見さん!ちょうど今貴方の話をしてたのよ」 「ほら!花井さん!チャンスよ!」 皆が私を見ている 私の謝罪を待っている ーーーふざけるな… 「菜穂…」 「…何?」 「仕返し出来た気分はどう?満足した?楽しかった?でも残念だけど私は痛くも痒くもないよ? 誰に何を思われようとどうだっていい 私にとっちゃただの雑音と変わらないから」 絶対に謝らない。こんな汚い世界で こんな醜い奴らの思い通りになんか…絶対になるもんか
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