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「……月島さん」
現れた月島さんの言葉に皆ハッとし、蜘蛛の子を散らしたように動き始める
私と菜穂と春宮さんと雪村以外はーー
「何の騒ぎなんすか?これ」
「…月島さん。知っていると思いますが、花井さんは風見さんにずっと嫌がらせをしていたんです…それを今咎めていたんですよ」
「…え?知ってたんですか?月島さん」
菜穂が困惑した表情で月島さんに尋ねる
「…まあ薄々は。だけど俺が風見のフォローをしてやればいいと思ってたんだ」
「何故、貴方は花井さんを止めなかったんですか?」
雪村が今度は月島さんを追及する
「……とにかく仕事が始まっちまう。この話は昼にしようぜ…」
「わかりました」
「花井もいいか?」
「…はい」
そうして一応その場は収まり、それぞれに動き出した
結局それ以上誰かが私に何かを言ってくることは無かったけど
皆が私を冷たい眼で見ているのが分かる
岡本さんも隣にいながら全く話しかけて来ない
完全にアウェーに成り果てた職場で淡々と業務だけをこなす
この冷たい空気はいずれ私の喉元へと突き立てられるのだろう
悪意という名の刃となってーー
だけど
黒い自分が、心の中で騒ぎ立てる
育まれた劣等感が、私の中の怪物を駆り立てる
より強い悪意を以ってその悪意を呑み込めと
立ち向かい 抗えと
私ではないもう一人の花井佳純が
全てを壊せと、私に囁くんだ
翔介さんーー
私が例え壊れてしまったとしても
貴方は私を愛してくれるかな…
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