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「…雪村は知らないかも知れねえけどよ…二人は本当に仲の良い親友だったんだよ。俺はそれをこいつらが入社した時から見てきたんだ…
だからどんだけ仲違いしても、最後にはまた二人で笑える日が来ると信じてる
まあ流石に今回の花井はやり過ぎだったが…
俺が下手に間に入ったら余計に拗れると思った。それだけだ」
「…月島さん」
「そうですか…」
「…残念ですけど、もう戻れません」
月島さんの意思はわかった
「私は過去を切り捨てましたから」
だけどもう戻るつもりもない
私は、愛する人と親友を秤にかけて愛する人をとったんだ
「菜穂と一緒にいたら私は潰れてしまうんです。劣等感で死にたくなるんです」
そう言うと、私の言葉に憤慨した雪村が声を荒げてきた
「…ふざけるな。だから風見さんをいじめていい話にはならないだろ…あんたはただ自分の心のバランスを取りたいが為に風見さんを攻撃してるだけだ!人間として最低だよ!」
そんなこと、初めから分かってる
「あんたに言われるまでもない。自分がクズなのは自分で一番分かってる…でも菜穂は全部持ってる。私には無いものを全部!
会社を辞めたからなんだっていうの!?ここを辞めたってどこででも働ける!私なんかと友達じゃなくなってもすぐに友達くらい作れる!!あんたみたいに味方になってくれる人だっていっぱいいる!!不公平なのよ!!私は…私には…」
もう翔介さんしかいないのに…
その一つすら菜穂に奪われかけたんだ
菜穂と私は違うんだーー
「ーー佳純は馬鹿だよ」
「…馬鹿だよ私は。今更何?」
「何も分かってない…」
「何が…?」
「…私には、佳純しかいなかったんだよ。佳純だけだったんだよ…私の世界に踏み込んでくれたのは」
「…!」
菜穂の眼から、涙が伝う
累積した哀しみが溢れ出すようにーー
止め処なく溢れる涙を見て私達の時は知らない内に止まっていた
「そんな佳純に裏切られて私がどんな気持ちになったか…わかる?」
そこには私の知る強くて凛々しい菜穂はいなかった
私が見たかった…弱くて、脆い菜穂
やっとその姿が見られた
嬉しい…
筈なのに…
この胸にあるものは何??
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