鳥谷家

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ーーーー けたたましい着信音が頭上に鳴り響く その音に、夢から引き摺り出された私は携帯へと手を伸ばす 「…誰…?」 翔介さんかな… 昨夜一本の電話も無かったしな… 予め会社の集まりがあるとは聞いていたけど、帰宅の連絡すら無いのは少し寂しい 漸く声が聴ける。そう思っていた 「…非通知?」 だけど着信は知らないところからだった 苛立ちを抑え、とりあえず出る事にした 「…もしもし」 「おい!今何してんだよあんた」 …うるさ… 何よいきなり 「あの、誰ですか?」 朝から大声を出されるのが嫌いな私は無愛想にそう尋ねる 「俺だよ。麟!」 「え!麟君!?」 電話は翔介さんの弟の麟君からだった 「今どこ!?」 「え…家だけど、ていうか番号…」 「ああ、兄貴の携帯からパクっといた。そんな事よりあんた知ってんのかよ」 さっきから麟君はやたら剣幕を立てて話している まだ完全に目覚めていない私の脳はそのテンションについていけていない 「…何が?」 「春宮って女が強硬策に出たらしいぞ!昨日竣兄が言ってた!」 …え 「ええ!?」 その言葉で、私の脳は一瞬にして覚醒した 春宮さんが…? あの女…だから飲み会の時…!私を見てたんだ… ムカつく!! 「ったく!呑気に寝てる場合かよ!何やってんだよ!」 …そういえば まだ麟君に話していなかったな 「…ごめんなさい麟君。協力してくれてるのはありがたいんだけどね…実は」 打ち明けようとした時、先に麟君から話を切り出してくる 「翔兄が会社を継ぐ話だろ?聞いたよ。 その話を知った時はあんたに殺意が湧いたけどな」 「…ごめんなさい」 「でも翔兄は俺に言ったからな。自分が実権を握った時、俺に社長の座を譲ってくれるって…だからまあ…今回は仕方ねえかなって …それに、もし会社が無くなったら社長になるだの何だの言ってらんねえし…悔しいけど今の俺じゃ数年でウェルズを立て直すなんて…」 そっか…麟君はまだ若い 経営の傾いた大企業を担うにはあまりに荷が重いかもしれない 今は自分が継ぐなんて言ってられる場合じゃなくなったんだ 「…ごめんね。でもそれなのにどうしてまだ私に協力してくれるの?」 「決まってんだろ!!あの女豹と結婚したら翔兄はいいように操られるに決まってる!そうなったらあいつに会社乗っ取られるだろ?!俺が翔兄とした約束もパアになるじゃねえか!」 あ、なるほど 確かにあの女ならやりかねない 社長夫人になったら益々増長しそうだし 「それで…さっき言ってた強硬策って?」 「ああ…それが何か、翔兄の家に押しかけて薬飲ませて襲うって…」 …プツン、と …私の中で何かが切れる音がした
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