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…あの菜穂が…いじめられていた…?
あの、強く凛々しい菜穂が?
いや、違う…きっと菜穂は…高校の時からずっと、そう見せようとしていたんだ
すぐに強がる癖は癖なんかじゃなく、あえて弱味を見せない生き方を選んできたんだ
そういう辛い過去があるから…同じ目に合わないように
以前、菜穂は言っていた
ーー中学の時…やたらしつこくアタックしてくる人がいたかな。最後の方はちょっとウザくて避けまくってたけどーー
あの日そう言ったのは、私にいじめられていることを知られたくなかったからだ
それでも鳥谷さんの事を隠さなかったのは…もしかしたら…
菜穂も心のどこかで、鳥谷さんを想ってたから??
…全部、菜穂に訊いてみないと
そしてもう一つ、私は彼に素朴な疑問を投げかけた
「でもどうして卒業してから菜穂に会いに行かなかったんですか…見守るというなら、正面から会いに行けば良かったじゃないですか」
「今日の風見を見たら、理由はわかると思う…もう僕は彼女にとってトラウマでしかないんだよ」
…そんな…でも確かに菜穂は今日ずっとおかしかった
まるで別人の様にしおらしく、弱々しかった
それが全てそういう理由だとすると辻褄が合う
「僕の話はこれくらいかな…君がどうしても許せないというなら僕は今から警察に出頭する」
ブラフでもハッタリでもなく、彼は本気でそう言っているようだった
「…菜穂に話を訊きます。あなたをどうするかは…それから考えます」
猶予を与えたのは多分、話を聞いたからじゃない
私はやっぱりこの人を…
「ありがとう。じゃ、連絡先を交換しないか?何かと都合がいいと思うんだけど」
「えっ…!」
その言葉に鼓動が跳ねた
こんな事一つで揺らぐ自分が嫌になる
嘘をついてるかもしれない、親友の敵かもしれないこの人を
心の底から、カッコいいと思ってしまってる自分に
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