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私はあくまで渋々連絡先を交換する素振りを見せた
精一杯素っ気なさを出し、本当は嫌なんだよ。と言わんばかりの表情をした
でも彼はそれを知ってか知らずか、私の顔を見て優しく穏やかに笑った
全てが見透かされているようで、恥ずかしかった
「花井さん。僕の事、嫌いになったよね」
…なった
とは言えない
嫌いになんて…
「でも、花井さんと話せて良かった。もっと早く知り合えてたらまたなにか変わってたのかな」
やめてほしい。そんな言葉を簡単に口に出さないでほしい
私は薄暗い森の中で一人迷子になったように
目印の無い分岐路でフラフラと彷徨うように
良心と恋心の葛藤の渦に呑まれていく
「今日はそろそろ帰ろうか。遅くなってごめんね…家はこの辺?」
「歩いて15分かからないんで…まだ大丈夫です」
何がまだ大丈夫なんだ…
「じゃあ、もう一杯だけコーヒーを頼もうかな」
いや、私はもう帰るので…
「じゃあ、私も」
違うでしょ!しっかりしろ!
ハァ…
この人は……危うい…
私を
おかしくさせる天才かもしれないーー
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