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その夜ーーー
「だから言ってやったのよ!あんたなんかいなくても生きていけるわってね!!」
「おいおい…風見、ちょっと水飲めよ」
「私は酔ってませんよ先輩!」
「声でけえよ。おい花井…なんとかしろ」
「無理です。菜穂酔ったらいつもこんなんだし」
「酔ってないっ!」
いきつけの居酒屋でいつものように菜穂が元彼の愚痴を叫ぶ
私と菜穂と月島さん、それから…
「菜穂ちゃんいつも元気だねー」
佐伯 康太 23
私と菜穂の一つ上の先輩の佐伯さんは、月島さんと仲が良くいつも飲みにくる時はこの四人だ
この人は月島さんと真逆で少し大人しめの人だ
「佳純ちゃんはいつも静かだねえ。もっと喋ってよー」
「あ、すみません…」
しかし正直、私はあまり好きではない。出会った初日から馴れ馴れしく下の名前で呼ぶ軽薄さが、大人しそうな見た目と反しているのがどこか腹が立つ
あと目がやらしい気がする
どちらかといえば月島さんの方が軽薄そうなのに、その辺はかなりしっかりしている
「おい、佐伯。あんま絡むな。困ってんだろが」
ほら、いつもこうやって助けてくれる
「なんでですか!?ただ話して欲しいだけなのに!」
「話して欲しいならなんか話題提供しろ。な?」
「そ、そうです!」
「話題かぁ。じゃあ、好きな男のタイプは?」
「好きな男…ですか」
その質問で私の頭の中は、電車の彼で満たされた
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